“爆睡したい”という願望。

「あ~、寝た~」

最後にそんな経験をしたのは、
いつだったか――

乳がんになってから熟睡したのは、
たぶん、数えるほどしかない

当時は眠るのが怖くて、

「このまま寝てしまったら、
 朝が来ないかもしれない」

と、毎晩不安でたまらなかった

それに、なぜか夜になると泣けてきた

“乳がん”という現実に
押しつぶされそうだった

「これからどうなるのか」という不安

そして、再発への恐怖感

治療の副作用のつらさ、
手術の身体の痛み...

数年続いた不眠

原因はきっと、
“乳がん”という漠然とした不安と、
ホルモン治療による副作用の
複合体だったのだと思う

うとうととした眠りの中で
朝を迎えると、

「嗚呼、今日も生きていた」

そう実感していた

それでも眠剤は処方してもらわなかった

理由は単純

“薬が嫌いだから”

眠剤は特に嫌いだ

癖になりそうな気もした

やめ時もわからない

が、こんなとき、
本当は薬の力を借りが方がいいらしい

なぜなら、がんとのつきあいには、
生活の質を上げる(維持する)こと、
そして、身体(精神的)への負担を
減らすことが大切だからだ

ひとには、

「薬に頼ってもいいんだよ」

そう言える

が、自分のこととなると、
からっきし駄目である

がんの手術から治療を終え数年が経っても、
眠剤に頼っている人もいる

“がん”とは、そういう病なのだ

さて、いつになれば、

「あ~、寝た~」

という日が来るのだろうか――

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Source: りかこの乳がん体験記

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