そこに求めたのは、場所ではなく、
もしかしたら『母らしさ』ではなかったか。
いつも、母は言っていた。
「眼鏡は良いのを使いなさい。タバコはダメよ。
酒飲みは大嫌い。介護保険も嫌だし使わないわ。
だって、そうでしょ?介護保険って、施設でしょ?!」
そんな母は、数年前から発症していたパーキンソン病も否定し
骨折も必死に克服し、病気を隠して暮らし、もう治ったわって顔で、
銀行や着物の先生やピアノの先生と付き合った。
そんな母に、父は、病気は根性で治せと話す。
弟も、父の介護はしても母は可笑しいから無理って、
いつも母からの電話をこちらに押し付けた。
そんな母は、きっと寂しかったのだろう。
最期の最後まで介護保険の拒否や訪問医療の拒否は、
父や弟の立場、歯科開業医の立場を、気にしてのことだったのだろう。
確定申告のたびに、上手くできなくなってきた近年。
僕に何度も電話をし税務申告を確認する一方、
手伝いに入るスタッフに今までの医院経理を自慢する。
それほどに、歯科医院の妻の立場にプライドをもっていた。
開業40年の事実は、やっぱり、本当に素晴らしく尊敬だ。
息子2人を、医師と歯科医師に育て、
2人とも別の地で開業までさせたんだから。
生前、こんな事もよく言っていた。
章ちゃん、あなたは女の子で産まれてくれたら良かったのに。
名前まで用意していたのに、、陽子って。
太陽みたいに明るい女の子が、今、
私のそばに居てくれたなら、、、男の子じゃ、ダメね。
今頃、天国で、そんな愚痴を祖母と仲良くしてることだろう。
章ちゃん、きっと今頃、アレヤコレヤ困ってる頃よ
その会話の中に、僕も混じって、おしゃべりをしたい。
そんな想像が、やっとできる週末。
家にこだわったのではなく、
母らしさ、歯科医の妻らしさに、
彼女は最期までこだわった。
そんな気持ちに今日は成れた。
久しぶりに優しい気持ちだ。
良い一日になりそうだ。
皆さまも良い週末を
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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」
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