20代で得た知見という本を読んだ。
本の内容自体はイマイチなのだが、このコンセプトは面白い。
「20代に得た知見」にインスパイアされて、今回は「30代で得た知見」をまとめてみたい。
- キャリア
- 根拠のない自信が打ち砕かれて成長する
- ブラック労働は肯定したくないけど役に立っている
- 研究をやる一番のメリットはアカデミアに対するコンプレックスがなくなること
- 仕事でもっとも大切なのはオヤジ転がしのスキル
- がむしゃらな努力は上司へのパフォーマンスとしてやる価値がある
- 自分のキャリアプランを他人に委ねたら失敗する
- 成長の実感は30代で頭打ちになる
- 他人から与えられる「やりがい」は搾取かもしれない
- どの資格を取るかよりどの資格を取らないかが大事
- 無能を揶揄していたら自分も無能な老害になっていた
- 中年になるとブライト艦長に感情移入できる
- 「成功には人格が重要」という言葉は後進を潰すための欺瞞かもしれない
- 意味のある意思決定とは、必ず何かを捨てることを伴う
- 医療
キャリア
根拠のない自信が打ち砕かれて成長する
若い頃は誰しもイキってしまう時期が存在するわけで。
それが砕かれたときに成長したと感じられる。
ときどき「イキリ研修医」、「イキリ若手医師」という言葉を聞く。
しかし仕事にある程度慣れてきたころ、過度に調子にのってしまうのは誰しも身に覚えがあるだろう。
これはダニング=クルーガー効果と呼ばれていて、医療現場に限った…
ブラック労働は肯定したくないけど役に立っている
不可抗力的に負荷をかけられることは、その後の人生に役に立つ場合がある。
もう二度とやりたくはないけど。
働き方改革が話題である。
今では仕事の裁量権が与えられソコソコの生活を送る自分だが、かつてはご多分に漏れずブラック労働の一端を味わったこともある。
今回はブラック労働の功と罪について書いてみる。
研修医のブラッ…
研究をやる一番のメリットはアカデミアに対するコンプレックスがなくなること
研究をやった一番のメリットは、自分の底が知れたということ。
30代のうちに「自分は本当は有能」みたいな勘違いを解いて、自分の能力を見切っておくのは大切だと思う。
前回(今の時代の医師に学位が必要なのか考えてみた)、学位は必要性はないがメリットはあると書いた。
バイオ系の博士号を持ったポスドクも在籍していて、彼らから学ぶものも多かったように思う。
今回、自分が研究から何を学んだか、…
仕事でもっとも大切なのはオヤジ転がしのスキル
若い時だけかと思ってたけど、どこまでいってもオヤジ転がしのスキルは大切だった。
これを鍛えるのを怠ったために、自分はキャリアが閉じてしまった感がある。
十数年前、国家試験に合格したくさんの医学知識を携えて始まった研修医生活。
しかしそこで直面したのは非情な現実だった。
点滴のオーダーのやり方すらもわからない状態で投げ出された内科の病棟。
医学知識なんてまっ…
がむしゃらな努力は上司へのパフォーマンスとしてやる価値がある
からがむしゃらな努力は嫌いだったけど、オヤジ転がしのテクニックとしては重要だったんだと気づいた。
要するに見せるための努力。
変な意地をはらずに、とりあえずやっておいたほうがいい。
みなさんには座右の銘があるだろうか。
自分が好きなのは「天才は1%のひらめきと99%の努力である」というエジソンの言葉。
この意味は、エジソンもすごく努力していたんだよ・・ということではない。
1%のひらめきがなけ…
自分のキャリアプランを他人に委ねたら失敗する
他人に依存したキャリアプランを立てて失敗したという話。
キャリアプランの中に他者という不確定要素を入れたらいけませんね。
(専業主婦とか他人に依存しすぎで怖すぎる気がする)
今回は自分の大学院の時の話。
学位(医学博士)の取得法には2つある。
4年の大学院を卒業して取得する課程博士「甲」と、論文だけで取得できる論文博士「乙」である。
研修医のときに様々な科の医師と出会い…
成長の実感は30代で頭打ちになる
30代中盤から成長の実感が得られなくなって停滞感に苦しんだ。
これは誰もが通る道らしい。
「働かないオジサンになる人ならない人」という本によると、サラリーマンは40歳付近で壁にぶつかることが多いそうだ。
会社員人生には前半戦と後半戦の2つの段階がある。
前半戦:~30代中盤
…
他人から与えられる「やりがい」は搾取かもしれない
停滞感を感じたとき、お手軽なやりがいに飛びつきたくなるんだけど、その前にちょっと考えたほうがいい。
必要なのはやりがいじゃなくて自己分析なのかもしれない。
地方の総合病院の経営は苦しい。
そのため会議は、いかにして病院の売上を上げるかの議題でもちきりである。
救急車を積極的に受け入れよう。病床稼働率を上げよう。などなど。
しかし大学からの派遣医師である我々は数…
どの資格を取るかよりどの資格を取らないかが大事
目の前の課題がなくなったとき、とりあえず身近な目標として資格を取得してしまいがち。
でももっとよく考えたほうがいいかも。
大局的にものごとを見ると、大切なものは別にある。
最近読んで面白かった本がある。
「転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方」である。
転職について書かれた本は多い。
このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法
…
無能を揶揄していたら自分も無能な老害になっていた
若い頃は無能な上司を批判していたが、いつのまにか自分も無能な上司になっていたという話。
30代のうちに気付けたのは良かったと思う。
みなさんの周りには無能なくせに上司批判ばかりしている中年はいませんか?
世の中には無能な人間があふれかえっている。
無能な上司、無能な経営者、無能な政治家。
なぜこんなに多くの無能がのさばっているのか?誰もがそんな疑問を抱いたことがあるのではないか。
その理由を明快に説明したの…
中年になるとブライト艦長に感情移入できる
昔は嫌な上司の見本のように感じていたブライトが、今は共感できるキャラクターになっていた。
上司の立場を経験すると感性が変わるらしい(良い意味でも悪い意味でも)。
久々に機動戦士ガンダムを観なおすと、昔とは違った印象をもったことに驚いた。
かつてはブライト艦長はイヤな大人の代表のような存在だった。
形式主義で偉そうだし、すぐに怒鳴り散らす。気に入らなかったら鉄拳制裁。
…
「成功には人格が重要」という言葉は後進を潰すための欺瞞かもしれない
世の中はポジショントークがあふれているわけで。
それを真に受けたら失敗するよという話。
「成功のためには人格的に優れている必要がある」
「人格はお金に先行する」
こんな言葉を耳にすることは多い。
でもそれに対してずっと違和感を持っていた。
キレイゴトすぎて、なんか胡散臭いな、と。…
意味のある意思決定とは、必ず何かを捨てることを伴う
大学入学以降、レールの上を歩いてきただけで、自分では何も決めていない。
意味のある意思決定とは、必ず何かを捨てることを伴う。
恐怖は大きかったが、意味のある決断だったと思う。
前回までのあらすじ
会社員人生には前半戦と後半戦の2つの段階がある。
20代から30代は目の前の仕事に懸命に取り組むことで、成長の実感や満足感を得ることができる。
しかし40歳あたりで仕事に一定のメドがつき…
医療
代替案を出せるのが本当のプロ
プロとアマの一番の違いは手数の差。
第一選択を出すことは研修医でもできるが、第二、第三と代替案を出すことができるのがプロである。
様々なシチュエーションを経験して、多くの治療の引き出しを持っておくようにしたい。
前回の続き。
最近AIの進歩によって人間の仕事が奪われることが心配されている。
医者も例外ではない。
【関連】落合陽一から皮膚科医が学んだこと
AI時代に医者はどんなプロを目指…
何もしない(経過観察)のも一つのスキル
診療をしていると「待つ」しかない状況がある。
しかし何もしていないと、不安になるし周りの目も気になる。
余裕を持って「待つ」ためには、相応の経験や自信が必要である。
診療をしていると「経過観察」を行わないといけない状況が生じる。
「その場では判断できないため、時間をおいて判断する」ということだが、患者が不信感を持つこともある。
「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかり…
わからないと言えるのは有能の証
臨床をしていると、どうしてもわからないことがある。
しかし「わからない」と言うためには十分な知識をもっていなければならない。
自分の知識に自信があるからこそ、にこやかに「わかりません」と言えるのである。
色々な面白い教科書を出版されている国松淳和先生。
今までいくつかの本を紹介してきた。
・蹄の音を聞いてシマウマを考える方法「ニッチなディジーズ」
・不定愁訴をみるために必要なこと「仮病の見抜き方」
・…
「先生に出会えてよかった」と過度に持ち上げてくる患者には注意すべし
ときどき患者から過度に感謝をされることがある。
「今までかかっていた医者は酷かった。先生に出会えてよかった」、と。
しかしここで「オレは患者の心をつかむのがうまい」と自惚れてしまうと、とんでもないしっぺ返しを食らうことになる。
ときどき「イキリ研修医」、「イキリ若手医師」という言葉を聞く。
しかし仕事にある程度慣れてきたころ、過度に調子にのってしまうのは誰しも身に覚えがあるだろう。
これはダニング=クルーガー効果と呼ばれていて、医療現場に限った…
未熟イキった医者のプライドを紹介状でくすぐれ
「どうしてもなおせなくてこまっています。どうかおねがいします。」みたいな紹介状。
こちらの自尊心を微妙にくすぐる巧みさがある。
馬鹿のフリをしているが確信犯。こういう老獪さを身につけたいものである。
開業医からの紹介患者を診ることが市中病院の医師の仕事である。
クリニックからたくさんの紹介を受けてきたので、どんな患者が紹介されてくるのかを考えてみると主に3つに分けられる。
診断がつかない
…
客を選べない仕事は不人気になりつつある
最近、客を選べない仕事が不人気になってきているという。
変な客の多い職場では働きたくない、と。
我々の職業は客を選べない仕事の最たるもの。
ずっと外来を続けていく道は考え直したほうがいいのかもしれない。
診療をしていると理不尽なクレームに遭遇することもある。
いきなり喧嘩腰。何を言ってもキレる。診察後はしっかり病院にクレーム。
その一人のせいで外来診療が嫌になる。
最近、客を選べない仕事が不人気になってきて…
赤字対策としての過剰医療
今後の高齢化する日本の医療に必要なことは「医療費をいかに減らすか」。
医療費を削減するためには、病院の規模を縮小して医師中心のキュアよりもケアの比重を高めることがカギになる。
しかし公立病院の経営陣から指示されるのは、軽症患者の積極的受け入れなど過剰医療の追求である。
このジレンマを解決する方法はあるのか…と高齢化の最前線で考えている。
前回のつづき
知り合いの内科医が急性期病院を辞めて、慢性期病院に移ったという話を聞いた。
理由は色々あるようだが、救急の負担もかなり大きかったとのこと。
赤字解消のため救急車の受け入れを増やそうとする病院側…
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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