糖尿病関係の医学文献を自分なりに整理して書庫代わりとするために始めたこのブログも3年経ちました.
最初の頃は あやふやだった概念も 次第に腑に落ちるものとなってきた反面で,2型糖尿病とは想像していたよりもはるかに複雑なものだと気づき 呆然とすることもたびたびです.
12年前に自分の糖尿病に気づいた時には とにかく得たいの知れない不安に気分がめいりました. しかし,『何もわからない』のと,『わからないことが非常に多いとわかった』のでは おなじわからないにしても大きな違いがあります.
したがって,ますます探求心が深まっているところです.
また,糖尿病に関する医学知識を,安直な『お茶の間医学』 やいわゆる健康雑誌ではなく,医学データに求めるようにしたところ,本ブログの過去記事をたんねんに読み込んだうえで ご意見やご助言をお送りくださる方も多くなり,意を強くしています.
そこで 本年の手始めがこれです.
第26回 日本病態栄養学会
来週 1月13~15日に京都国際会館で 『第26回 日本病態栄養学会 年次学術集会』が開催されますので,野次馬参加してきます.
この学会は,主として管理栄養士,そして 病態栄養専門医[★],並びに 大学/栄養学科の学生さんが参加する学会で,食事療法の重要性が高い病気,つまり糖尿病・高血圧・高脂血症・腎臓病などの栄養管理を専門とするものです.
[★]『病態栄養専門医』はほとんど耳にしたことがないでしょう.糖尿病専門医は 日本に約 6,000人ほどいますが,病態栄養専門医 は わずか400人ほどですから.
本年のプログラムは ここで公開されています.
また私が一貫してWatchしている糖尿病の食事療法に関しては,合同パネルディスカッション4 [PDF] で集中的に議論されるようです.
特に
順天堂大 綿田裕孝先生の冒頭講演では;
合 PD4-1 糖尿病食事療法のための食品交換表の活用における問題点
現在ほとんどの病院で供されている『糖尿病食』のベースになっている『食品交換表』について,学会がこれを今後どうしようとしているのかがうかがえる内容であろうと期待しています.
以前にも書きましたが,1月に開催されるこの日本病態栄養学会は,5月に開催される日本糖尿病学会の予告編になっていることがよくありました.
食品交換表の位置づけ
現在 日本糖尿病学会が一般医師向けに発行している 糖尿病治療ガイド では,糖尿病食事療法における食品交換表の取り扱いは いかにもあやふやな位置づけになっています
A 食事療法の進め方
一般的には,初期設定として指示エネルギー量の40~60%を炭水化物から摂取し,さらに食物繊維が豊富な食物を選択する
B 食事療法の実際
炭水化物摂取比率が50~60%でエネルギー制限食の場合は「食品交換表第7版」28~33頁も参考にできる.糖尿病治療ガイド 2022-2023 p.50
上記の通り,同じページに記載されている『食事療法の進め方』と『食事療法の実際』とで,推奨する炭水化物の比率が食い違っているのです. しかも食品交換表は『参考にできる』であって,長年主張してきた『理想的な食事療法』という表現は引っ込めています. これでは 食品交換表を使えと言っているのか,使わなくてもいいと言っているのかきわめて曖昧です. 全国の管理栄養士は,これまで患者には いささかの例外もなく 食品交換表通りの食事を行うよう指導してきたのですから,現在おおいに困惑しているので;
と 叫びたいでしょうね.これが変なことは 既に関係者が何度も指摘しているので,今度こそ方針が示されるのではないかと期待します.
なぜ これほど食品交換表にこだわるかといえば,これが改まらない限り 病院の『糖尿病食』は変わらないし,病院の糖尿病食が変わらないと,一般クリニックの『栄養指導』も変わらないからです.管理栄養士が常駐していない 一般のクリニックでは.医師は『糖尿病治療ガイド』に書かれていることを そのまま患者に言うだけなのですから.
また プカ様のこの記事 に;
病気の周辺にいる人々に対して、コメディカルがどのようにアプローチをし、
とあるように,管理栄養士は われわれ2型糖尿病患者に どうアプローチすべきと考えているのか,そのあたりも探って記事にしたいと思っています.
1月の京都,それも洛北の京都国際会館,雪に降られることはほぼ確実ですが,行ってまいります.
以上の通り,本年も 糖尿病とは何か について 書き連ねたいと考えております.
糖尿病とはまったく関係のない記事の羅列はうんざりですからね.それくらいなら,糖尿病に完全に間違えた取り組み方をしていても,その熱意だけにはエールを送りたいです.
本年もよろしくお願い申し上げます.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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