≪私の記録 299≫ 「出ていけ!!」事件 ⑤ ~「死んでやる!!」~

そして私は着の身着のまま、
携帯片手に家を飛び出した

死ぬ気だった

私が死んだら、
両親は少しでも後悔するだろうか

それともなんとも思わないだろうか

いや、後悔させたい

非情な父と、
「あんたなんか産まなきゃよかった」と、
子どもの私に云い放った母

私がいなくなったことで
清々するかもしれない

「なにも死ななくてもいいのに!!
 死ぬ気になれば、なんでもできるでしょ。
 前向きじゃないね、あの子は!!」

そんな母の言葉が
聞こえてくるようでもあった

それは自分たちが反省するのではなく、
あくまでも“私が悪者”として

とりあえず私は彼の家へ向かった

10月の末

日中は17℃くらいと暖かくても、
陽が落ちるとぐっと気温が下がる

午後6時過ぎという時間にもかかわらず、
予想以上の寒さ

上着も着ず、
トレーナー1枚で家を飛び出した身体には
さすがに寒さが沁みる

長年、北海道に住みながら、
この時期の、この時間帯の
北海道の寒さを完全に侮っていた

しかもまだ6時過ぎにもかかわらず、
外はもう真っ暗

夜遅い時間と勘違いするほどだ

「やっぱりこのまま死のう」

彼の家に向かっていた足は、
山のほうへと進む方向を変えた

そこは、いつも私が
“死に場所”と考えていた場所だ

  ごめん...
  親と大喧嘩した

  今までいろいろありがとう

  さようなら...

私は冷たくなった手で、
彼にメールを送った


『どうしてこんなことになるのだろう

 ずっと自殺願望を抱いてきて、
 乳がんがわかって
 “死にたくない”と思ったのに...

 主治医にも
 命を助けてもらったのに...

 なのに、
 なんでこうなっちゃうの!?』

哀しくて哀しくて
涙が止まらなかった



しばらく歩いていると、
彼から着信があった

無視した

携帯はしつこいくらいに鳴り続けた

そう、
「死ぬ」と云いながら
携帯を持って家を出た

その時点で私はきっと、
誰かの助けを求めていたのかもしれない

心のどこかに、
『まだ死にたくない』

そんな生への執着が
残されていたのだろう

どれくらい歩いただろう...

2時間ほど経っただろうか

昔から“死に場所”と決めていた、
あの山の入り口にさしかかると
さすがに外灯はひとつもない

真っ暗な中、恐る恐る歩を進めてゆく

山はそんな侵入者を拒むかのように、
ざわめいた

聞いたことのない音...

得体の知れない鳴き声...

途轍もない恐怖が襲ってきた

いや、最大の敵は寒さだった

この時期の寒さにトレーナー1枚では
とても夜は過ごせない

『まぁ、凍え死ねるなら、
 手っ取り早いじゃん』

身体はすでに限界

異常な震え

そして手も足も、
身体全体の感覚さえも失われていた

携帯も握っている感覚がなく、
もはやメールも打つことができないまでに
凍えていた

『助けて』

私の心が叫んでいた

時折鳴る携帯...

私はとうとう
彼からの電話に出た

「今どこにいるの!?」

「なんか、知らない川がある」

「どこの川?」

「看板に、“○○川”って書いてある」

「え? それどこ? 聞いたことないよ。
 どこの川?」

「もう携帯のバッテリー少ないよ...」

寒さでブルブル震え、
喋ることさえままならない

どれくらい経っただろう

彼が私を見つけてくれた

死ぬこともできず、
周りに迷惑をかけるだけ

情けない...

母が私のことをなじってきたのは、
きっとこういう性格だったからなのだろう

私は彼の家に連れられて行った

そして彼の部屋に
遅くまでいさせてもらった

暖房が暖かかった

「一緒に住もう」

彼はそう云ってくれた

が、諸事情を考えると
そうもいかない

簡単にはいかないことが
あまりにも多すぎる

私が外を歩いている間、
彼も思い当たる場所を
車で探し続けていたらしい

まず、行ったのは私の家

こっそりと、親に知られないように、
2階の私の部屋に上がったらしい

そのとき母に、
「りかがいなくなった」と
声をかけてくれればよかったのに

きっと母は、私がいなくなったことさえ
気づいていないだろう

気づいていたとしても、
「彼と夕飯を食べに出かけたのだろう」

くらいにしか、きっと思っていない

そう考えたら、悔しくて仕方がなかった

私が死のうとしていたなんて、
きっと両親は知らない

実際、あんなかたちで
晩ご飯を放棄してしまったので
お腹がペコペコだ...

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Source: りかこの乳がん体験記

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