PSYCHO-PASS(サイコパス)というアニメがある。
総監督は「踊る大捜査線」の本広克行。
そして脚本は「まどかマギカ」「Fate/Zero」の虚淵玄という豪華な布陣。
ジャンルはSF刑事ドラマで、近未来、刑事モノ、群像劇という3つのお題のもとに作られている。
当初、お題としていただいたのは、“近未来” “警察もの” “群像劇”の3つのキーワードです。
舞台は西暦2112年、人間の心理状態や性格を数値化できるようになった時代の日本。
犯罪係数が規定値を越えた人間は、たとえ罪を犯していなくても「潜在犯」として裁かれ、平和な社会が実現されていた。
このような時代背景の中、システムの目を逃れて起こる事件を解決する刑事の姿を描くアニメである。
昨年新作映画が公開されたのをきっかけに観なおしてみたので、今回は名作アニメ「サイコパス」を紹介する。
①近未来
まずはSFとしての側面。
「サイコパス」の制作スタジオは、伝説のSF刑事ドラマ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」と同じプロダクションI.G。
そのため攻殻機動隊SACとの差別化が意識されているようだ。
プロダクションI.Gさんには『攻殻機動隊』という金字塔があります。そこから離れる手段はなんだろうと考えました。
サイボーグや電脳といったキーワードの世界観と超人的な特殊部隊のバトルを脱却した警察ものです。
差別化のポイントは電脳化、義体化というサイバーパンク的世界観から離れること。
そこで設定されたのは「ディストピア」「管理社会」という世界観である。
「管理社会のディストピアのなかでの犯罪者、刑事の物語」という提案をしました。
犯罪者は犯罪を犯す前に事前に裁かれる。
職業の適正判断はシステムが判断し、交際や結婚も適性判断が重視される。
そんな世界はどんなものなのか、どんな事件が起こるのか。
この設定がサイコパスの面白さでの一つである。
また近未来の日常描写も見どころ。
プロジェクションマッピングで部屋や服装をコーディネートしたり。
メタバースが一般化していたり。
➁刑事もの
次に刑事ものとしての側面。
攻殻機動隊SACに登場する公安9課の相手は主に政治犯。
一方、サイコパスの公安局刑事課の相手は民間の犯罪者である。
無機質なSFではなく、「踊る大捜査線」のような刑事たちの「追いかけっこ」や「知恵比べ」を描く泥臭い作品にしたかったとのこと。
本広総監督は、その近未来ディストピア世界でもがく刑事たちの「追いかけっこ」や「知恵比べ」を描くことを選んだ。
警察ものの原点に立ち返った泥臭い刑事たちが、本作では描かれている。
事件は猟奇殺人が主で、「羊たちの沈黙」、「セブン」などを彷彿とさせるサイコサスペンスとなっている。
推理モノ、サイコサスペンス好きにはたまらないストーリーである。
また各話でしっかりと「引き」作られていて、続きが気になる構成になっているのも良い。
③群像劇
そして群像劇としての面白さが、このアニメの一番の魅力である。
SFを描きつつも地に足の着いた人間を描く。
近未来を描きつつ、「踊る大捜査線」シリーズのように地に足の着いた人間を描く
生々しい人間ドラマを目指す。
キャラクターそれぞれが、職務の理想と目の前の現実のギャップに葛藤し、ときに逸脱する
本作が目指す生々しい人間ドラマ
このあたりは「踊る大捜査線」の要素がいかんなく発揮されている。
主人公は新人刑事の常守朱。
本作のメインストーリーは新人刑事の青春群像劇である。
最初は頼りなかった彼女も、数々の事件を経て大きく成長する。
また周りのキャラクターのサブストーリーも魅力的になっている。
宜野座伸元
常守の上司である宜野座伸元。
将来有望なエリート刑事だが色々なものを抱え込んでいる。
言うことを聞かない部下、父親との確執、自分の犯罪係数の悪化。
上司と部下の間に板挟みになり、追い詰められ、葛藤し悩む(ときに周りに当たり散らす)彼の姿も本作の魅力の一つ。
虚淵先生の寵愛を受けたキャラクターのようだ。
あれは僕なりのメガネエリートをいじめたいという気持ちが表に出てしまったもので……。
それを受け入れていただけたのは本当に感無量なんですけど。そんな煩悩まるでだして良かったのかなって(笑)。
執行官
常守の部下である「執行官」は、刑事として働くことを条件に釈放された潜在犯たち。
彼らのバックストーリーもしっかりと描かれ、奥行きがあるドラマになっている。
常守のバディ的ポジションの狡噛慎也。
彼は殺された部下の姿を見て犯罪係数が悪化した元刑事。
部下の復讐のために捜査を続けている。
狡噛と常守の関係性は「踊る大捜査線」の青島とすみれさんを踏襲しているそうだ。
踊る大捜査線のときに、2人の関係をはっきり描くようなシーンはない代わりに、細かい描写を積み重ねて、見る人に補完してもらうようになっていると。
(サイコパスオフィシャルプロファイリング)
チームの頼れるベテラン征陸智己(踊る大捜査線の和久さん的な)。
凄腕の刑事だったが、新しい刑事の在り方とシステムに馴染めず犯罪係数が悪化。
チームのムードメーカ縢秀星。
5歳の時点で潜在犯と判定され、隔離施設行きとなった過去を持つ。
チャラいように見えて重たいものを抱えたキャラクター。
槙島聖護
様々な事件を裏から操る本作のラスボス槙島聖護。
頭脳的で、哲学や小説の引用を多用する中2的な人気キャラ。
狡噛の部下の仇でもあり、槙島と狡噛の対決が本作のクライマックス。
SFとして作り込まれていながらも、最後は男の戦いに帰結していくのもこのアニメの好きな点である。
ディストピアSFと見せかけて「スクライド」みたいな男の戦いを描くというアイデアを出したんです。
(サイコパスオフィシャルプロファイリング)
ディストピア
人間の精神状態が数値化され、職業も進学も選択の自由が奪われた管理社会。
このような世界観の作品では、社会体制の批判がテーマになるのが一般的である。
「私たち人間らしくあるために。考え、悩み、決断することを忘れてはいけない」
…という具合である。
しかし虚淵先生は、サイコパスは管理社会批判の物語ではないと語っている。
これは管理社会に対する批判の物語とは違うのですか?
虚淵:そうではないですね。管理によって人間が救われて幸せになっている世界です。ただそうした世界ができたがゆえに歪みが出てきます。その時に、あらためて昔ながらの刑事の仕事に出番が出てくるという位置づけです。
選択パラドックスという言葉がある。
人間は選択肢がたくさんあるほうが幸福だと思いがちだが、実は選択肢が多いほど人は不幸を感じやすくなるそうだ。
必ずしも自由が幸福につながるわけではない。
安易に「自由はすばらしい」などと言わず、「管理によって人間が救われて幸せになっている世界」と言う虚淵先生のシニカルな思想に共感してしまう。
まとめ
今回はアニメ「サイコパス」についてまとめた。
様々な要素がハイレベルでまとまった作品であり、特にサイコサスペンス好きにはオススメしたい。
2期以降はイマイチになってしまったのは残念だけど…。
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Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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