Volumetrics 嵩(かさ)高い食事

健康法

肥満型糖尿病と非肥満型糖尿病とでは,病態が違うのですから,当然 その病態に応じた食事療法を推奨するのが科学的と考えます.

この考えにより『2型糖尿病の食事療法のアルゴリズム』をこの記事で提案しました.

投薬の選択が肥満型と非肥満型で異なるのなら,推奨する食事療法も異なるのが当たり前です.

肥満型糖尿病の場合は,体重を減らせば 速やかに糖尿病がよくなります. 正常レベルまで寛解することも珍しくありません. とすれば 何よりも『確実に減量できる食事』が推奨されるべきです.

食事のカロリー密度

上図で,肥満型の人に推奨している『エネルギー密度の低い食事』とは,体積又は重量の割に,エネルギー すなわちカロリーの低い食事のことです.(以下 用語は『低カロリー密度食』で統一します)
満腹感が得られるのに,カロリーは低いので,空腹感に悩まされずに体重減量が可能になります.

なお,『カロリー密度』とは,食品1gあたりのカロリー(kcal/g)のことです.

分かりやすいところでは,キャベツのカロリー密度は 0.23 kcal/gです. つまり1kgのキャベツ 1玉は 230kcalしかありません.とても食べきれる量ではないですが,まるまる1玉かじっても230kcalなのです.

(C) chyako さん

低カロリー密度食

低カロリー密度食』を 最初に Volumetrics Diet Weight-Control Plan という名前で提案したのは,米国の Barbara Rolls教授(ペンシルバニア州立大学)でした.

Barbara Rolls

『少ないカロリーでお腹いっぱい』Feel Full on Fewer Calories なので,減量が容易に達成されるとしています.この表紙写真を見れば 一目でわかりますね. 左の具沢山のスープと右のスイーツは全く同じカロリーなのです.このように;

  • 汁物にして みかけの体積と重量を増やし
  • 低カロリーの野菜をふんだんに使えば

全体としては カロリー密度の低い食品になります.

実際 私も食品交換表を信じてカロリー制限食をやっていた頃,食事の前にボウル一杯のキャベツの千切りをドレッシング無しでまず食べるようにしていたら,あっという間に痩せました. このキャベツの山をたいらげた後では,ぼてじゅうのお好み焼きを出されてもお腹がパンパンで食べられません.

この『低カロリー密度食』と通常の食事とで減量効果を比較した結果が報告されています.

Stelmach-Mardas 2016

食品のエネルギー(カロリー)密度と体重変化との関係を調べた13本の文献のメタ解析結果です.対象者は 18歳から66歳までの3628人の成人で,

Stelmach-Mardas 2016 Fig.2

上図のように カロリー密度の低い食事は有意に減量効果があることが示されました.ランダム化試験(RCT),観察研究(Cohort Study)のいずれの文献でも,低カロリー密度食が体重減量に有利であったことがわかります.

唯一 RCTのStookey(24)だけは逆の結果が出ていますが,この試験はやや特殊で,各種の食事療法(Atkins,ZONE,LEARN,Ornish)を実行している対象者に その食事療法はそのままにして,多量の水分を摂らせる/摂らせないという比較試験で,多量の水分を摂ること自体が体重減少を支配している,という結論でした. これは結果として『水で満腹にすれば 摂取カロリーは減るので痩せる』ということを表しているのでしょう. いわゆる『茶腹もいっとき』の効果です.

実行方法

低カロリー密度食事療法を実践する具具体的な方法は簡単です.Volumetricsを提唱したRolls教授は,以下のガイドラインを示しています.

カロリー密度によって,食品を下記のように4分類し,第1・第2カテゴリーのものを食べていいもの,第3カテゴリー以下を避けるべきものとしています.

第1カテゴリー:カロリー密度 < 0.6kcal/g

果物: リンゴ、オレンジ、ナシ、桃、バナナ、ベリー類、グレープフルーツ
でんぷん質のない野菜: ブロッコリー、カリフラワー、ニンジン、トマト、ズッキーニ、ケール
スープ: 野菜スープ、チキンスープ、ミネストローネ、レンズ豆スープなど
無脂肪乳製品: スキムミルク、無脂肪ヨーグルト
飲み物: 水、ブラックコーヒー、無糖のお茶

第2カテゴリー:カロリー密度 0.6~1.5 kcal/g

全粒穀物: キヌア、クスクス、ファロ、そば、大麦、玄米
豆類: ひよこ豆、レンズ豆、黒豆、インゲン豆
でんぷん質の野菜: ジャガイモ、トウモロコシ、エンドウ豆、カボチャ、パースニップ
赤身のタンパク質: 皮なし鶏肉、白身魚、赤身の牛肉または豚肉

第3カテゴリー:カロリー密度 1.6~3.9 kcal/g

肉類: 脂身の多い魚、皮つきの鶏肉、脂肪分の多い豚肉や牛肉
精製炭水化物: 白パン、白米、クラッカー、白パスタ
全脂肪乳製品: 全乳、全脂肪ヨーグルト、アイスクリーム、チーズ

第4カテゴリー カロリー密度 ≧ 4.0 kcal/g

ナッツ類: アーモンド、クルミ、マカダミアナッツ、ピーカン、ピスタチオ
種子類: チアシード、ゴマ、ヘンプシード、フラックスシード
油類: バター、植物油、オリーブオイル、マーガリン、ラード
加工食品: クッキー、キャンディー、チップス、プレッツェル、ファーストフード


これを見ると,Rolls教授の推奨する Volumetricsとは,結果的に菜食主義(ベジタリアン,ヴィーガン,PBWF)に近いものになります. ただし菜食主義とは一部異なり,動物性食品を 動物性であることを理由に排除したりはしません. カロリー密度の低い肉ならOKです. また ナッツ類などは『少量で高カロリー』なので 避けるべきものとなります. いずれであれ,『一口で高カロリー』のスイーツは 論外になります. この食事法に挫折する人はこのあたりが原因でしょう.

また注意点として,低カロリー密度食は自動的に低脂質となりますから;

必須脂肪酸まで最低摂取量を下回ってはいけない.
さらに油溶性ビタミンが不足しないように注意

などには注意が必要でしょうう.

 

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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