産業医としてのアドバイス

これまでに経験のない時代を生きる皆さんへ

産業医としてのアドバイスをさせていただきます。

・コロナウイルス感染症が拡大しつつあるこの現状において、テレワークが実現しているのは都内で9%、全国で見るとたった5%というデータがありました。

まずテレワークが可能な方はそんな職業、環境にいることをラッキーととらえて頂けたらと思います。

世の中には私のような医療職も含め、店舗、カフェやレストランなど飲食店、美容院、運動指導などのように、現場に立つことでしか貢献を生み出せない職種も少なくありません。しかし、そんな職種ですら、現場以外で自分に何が出来るのかを考える機会と思っていただけたら嬉しいです。

・完全テレワークでずっと自宅で仕事してる方へ

これからは感染に対する対策だけではなく、メンタルマネジメントが必要になってきます。レジリエンス高く過ごすために幾つかアドバイスさせて下さい。

-ご家族が同居の場合は適度な会話、コミュニケーション、スキンシップなどを持ちましょう。

-ペットのみと同居の場合は、ペットとのスキンシップでもストレスを減らすオキシトシンの分泌が増え、結果的に感じるストレスを減らすことができます。せっかく長い時間一緒に過ごす機会ですから、ペットとの絆を深めることもご自身にプラスになります。

-完全ひとり暮らしの場合は、強く意識して生活スタイルを崩さないようにしましょう。

「朝ちゃんと起きて、夜ちゃんと寝る」

→生活サイクルを崩さないことは、視床下部への慢性的なストレスを減らし、自律神経、内分泌、免疫の機能を落とさない大切な取り組みです。

朝、webなどで何かしらのコミュニケーションの場を持ち、半強制的に朝をスタートさせることも有効かと思います。

「移動は自転車か徒歩で」

→​皆さんの自覚されているとおり、閉鎖空間の代表である電車・地下鉄・バスなどでの移動は最大級のリスクととらえ、避けましょう。土日だけでなく平日も外出は極力控え、移動は自転車か徒歩(か自家用車)での移動に限りましょう。

自転車や早歩きは運動にもなります。睡眠と運動の確保こそが、生体リズムに合った望ましい24時間の使い方に寄与します。

朝や夕方に、何かしらのwebツールを使って自宅トレを習慣にするなどの取り組みはいかがでしょうか。太陽を浴びながらの朝の散歩やサイクリングもお勧めです。

「3食摂りましょう」

→バランスのよい栄養は必須です。

特にひとり暮らしの方は、麺類、パスタ、丼ものなど簡単に食せるごはんを摂り続けると炭水化物は摂れるものの偏りやすくなり、バランスよく栄養素を摂れなくなってしまうタイミングだと認識していただきたい。意識して食べるものを選びましょう。皆さんの知識を総動員して、サプリも有効活用してください。私は今、グルタミンを足しています。

また、朝食からスタートし(朝食はプロテインだけ、でも悪くはないと思います)3食ちゃんと摂ることで、生活のリズムやメリハリが生まれます。栄養面でもリズムを崩さないためにも、欠食は避けましょう。​

・社屋などへ出社されている皆さんへ

-とにかく人との距離を保ちましょう。6フィート、2メートルを意識してください。

先述のとおり、避けられるだけ公共交通機関での移動は減らしましょう。社屋内においては、せっかく人も少ないでしょうから立ち話でも2メートルの間隔は保ちましょう。​

-手洗いうがいは本気でお願いいたします。

ハンドソープやせっけんを用い手を洗いましょう。どこかからどこかへ移動した際には必ず手洗いをしましょう。アルコールは手を洗えない環境において有効です。手が洗えるのであれば、手洗いを優先してください。

洗った手は、清潔なタオルやペーパータオルで拭きましょう。共用の場では、タオルを清潔に保つため交換を早めるのも大切です。ジェットタオルは電源を切りましょう。

私自身はドアノブ、エレベーターのボタンなども直接触れないようにしています。ちょっとやりすぎ感があるくらいの潔癖度がちょうどいい、くらいの時期だと考えてください。​

-マスクは飛沫感染の予防のみならず、自分の手でウイルスや細菌を自分の鼻や口に運ばないという意味でも有効です。今後、本気で手に入らなくなる可能性も否定できません。私の勤務先イークも、現在の在庫以降サージカルマスクもビニール手袋も入荷の予定はありません。

Twitterなどで、マスクの端のひもの部分を残し、普通のハンカチをマスクのひもの部分に引っ掛けるかたちで折りたたみ、簡易的なマスクとして使える方法など散見されます。ご参照ください。

自分が感染しない、自分が感染源にならない、どちらの目的でもマスクを有効に活用しましょう。

・ストレスマネジメントの方法

不安を感じる、心配するという気持ちの変化は、言わば自分の身を守る防御反応として自然な情動の変化です。不安を感じるな、ではなく、不安な気持ちをまず受け止めてください。その上で、ご自身の24時間を眺めてみて、どんな時に不安を強く感じるか、どんな時には不安な気持ちが減っているかを自分なりに把握してみてください。

テレワークの皆さんは好きな音楽流しながら仕事できるときです。好きな音楽聞いてください。

休憩の際には癒しの動画を見るのもありだと思います。

ヨガやトレーニングのweb配信も増えました。

ひとり暮らしの方は、ご家族や大切な方と電話で話す機会も大事です。その際に不安を共有するのもだめではありませんが、不安は伝染します。ぜひ前向きな言葉を共有する、安心できる言葉を選ぶ、共感する、感謝する、そんな時間を創る意識を持つことで電話の時間がプラスになるかと思います(無理にとは言いません)。

企業において言っていいことではないかもしれませんが、経済はあとからでも戻せます。

しかし命は戻せません。

諸外国のようにならない、もしくは少しでも程度を抑えるため、個々の高い倫理観が求められる時です。そしてこんな時だからこそ、まわりに対する有難みや思いやり、優しさ、支え合うお互いさまの気持ちをもう一度、心のベースに置いていただけたらと願っています。

産業医の仕事は、からだと心の健康を優先することで働く皆さんのパフォーマンスを高め、企業の価値を生み守るのが仕事です。まずはご自身の安全に責任を持った取り組みをお願いしたい。その上で 皆さんのまわりの大切な方の安全を守り、目の前にある出来ることを粛々と積み重ね、可能であれば社会やコミュニティ、まわりの方々に前向きな気持ちやメッセージや元気を届け続け、いずれは日本や世界の経済の立て直しをイメージしながら、この貴重な時間を過ごしてください。

それまで、元気にお会いできる日を楽しみにしています。

 

2020年4月6日 産業医 高尾美穂

産業医としてのアドバイス高尾美穂で公開された投稿です。

Source: 高尾美穂

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