猫の寄生虫:とても詳しいネコノミの生態のお話

その他

ネコノミ Ctenocephalides felis

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前回は
犬の寄生虫:犬フィラリアの生態について書きました。
あまり知られていない詳しい犬フィラリアについてのお話でした。

今回は
猫のノミです。

ここから先は
   寄生虫の話になりますので
   興味のある人だけが
   この先
   読み進めてください。

800px-Ctenocephalides_felis,_adulte.commons.wikimedia.org

世界にはノミは
15科200属に分類され
約2千種類以上います。

日本には約80種類のノミが知られています。
私たちの身近で一般なノミは
ヒトノミ科(Pulicidae)の
ネコノミ(Ctenocephalides felis)
イヌノミ(Ctenocephalides canis)です。

最もよく見るノミは
ネコノミ。

いまや日本では
犬についているノミも
イヌノミではなく
ほとんどが
ネコノミです。

それは
ネコノミが宿主特異性が弱く
どの生き物にでも寄生することや
活動的で移動能力にも優れていることが理由です。

ちなみに
日本やヨーロッパ諸国では
ネコノミとイヌノミの両方が見られますが、

オーストラリアや米国、アフリカ南部では
イヌノミはいません。

イヌノミとネコノミは
頭部の形で容易に区別がつきます。

ネコノミの頭部は

イヌノミよりも尖っています。


 ここからは
 ネコノミのお話になります。

一匹のノミのメスは
毎日25~30個の卵を産卵します。

産卵は
一般的に
動物が活動しない深夜に行われます。

これは
自分が生んだ卵を
孵化してからの幼虫の発育に最適な場所に落とすためです。

ノミは
吸血と産卵をくり返して
およそ1~2カ月で一生を終えます。
生殖寿命で最大2000個もの卵を産むことができます。

ノミを理想的環境下で飼育したシュミレーションでは
メスノミ10匹を一か月飼育すると、
一か月後には
ノミ成虫が約2,000匹
卵が90,000個以上
幼虫が10数万匹
になるとされています。
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ネコノミの卵は
低温や乾燥、殺虫剤などにも抵抗力があります。

少しくらい過酷な環境でも
しっかりと生き延びられます。

動物の体の表面にいるノミの成虫だけを取り除いても
すぐに卵から発育・繁殖するために
ノミを捕まえるだけでは簡単に駆除できないのは
この産卵があるからです。

産んだ卵は
宿主である動物の動きによって
数時間以内に
ノミの糞と共に
動物の身体から落下して
周囲の環境へと散らばっていきます。

卵は
直径0.2~0.5mmほどの大きさ。

色は白か黄白色で、
真珠のように光沢があります。
表面がつるつるしているから
産卵されると
動物の身体から落ちやすくできているのです。

気温27度前後、湿度が50%以上あると
孵化に最適な環境です。

産み落とされた卵は
1~6日で孵化して
L1と呼ばれる幼虫になります。

幼虫は
下顎を有する頭部と
12体節で形成されています。
眼と脚はありません。

この下顎は卵の中ですでに発達し
下顎を使って卵の強い殻を破って
出てきます。

以前流行したプログラムという薬は
このノミの赤ちゃんの下顎を柔らかくしてしまう薬でした。

この薬を飲んだノミから生まれた卵の中の幼虫は
下顎が柔らかくて
卵の殻を破って孵化することが出来ないために
死んでしまうのです。

L1幼虫は、

脚はないものの
各体節に生えている剛毛を使って自由に動くことができます。

また目がなくても
光を感じることができます。

幼虫は
室外では、直射日光の当たらない場所
室内では、動物の寝床、畳や絨毯、部屋の隅、ぬいぐるみ、家具の下やすき間などの暗く湿ったところ、ソファーの隙間やベッドの上など
お母さんノミが寄生する動物の近くにいます。

L1
体長2mmくらい。
卵と共に落下したお母さんノミの糞を食べて成長します。
もしノミの糞が無い場合には

人の食べ残しや瓜実条虫の虫卵を含む片節なども食べます。
瓜実条虫の片節は、ノミの幼虫が好んで食べてくれるように
ノミの好みの味になっています。

同じ幼虫を共食いすることもあります。

そして
脱皮してL2になります。
この時の体長は3~5mm。

さらにもう一回脱皮してL3になります。
この時の体長は5~8mm。

この間は
ふ化してから5~11日ですが
長いものでは幼虫のまま200日を超えた個体も記録されています。

次にになります。
幼虫は
蛹になる時に
カイコのように
唾液を紡いで絹のを作ります。

幼虫は、
蛹化の前に糸を吐いて、
その糸をつづり合わせて安全かつ快適なカプセル状の構造物を
自分の周りに作り、
その中で蛹になるのです。

昆虫たちが作る繭の糸は、
カイコで詳しく研究されていますが
とても機能的な成分と構造を有していることが判明しています。

繭は
白色ですが、
表面の繊維は柔らかく、粘着性があって、
蛹周囲のゴミを付着させてその姿をカモフラージュしています。

繭の長さは
3~5mmです。

この繭の成分も
将来、人の役にたつ時がくるかもしれません。

蛹の中では
約一週間で
幼虫が一度流動的な液状になります。

自分自身が作り出す酵素によって
ほとんどの細胞組織を溶かしてしまい、
一部の神経系や特定の筋肉の部分を残して
液状となって
成虫原基と呼ばれる部分が中心となり
急速に成虫の形へと作り変わっていくのです。

こうして
成虫の形へと変態します。

蛾を使った実験では
変態して身体が完全に生まれ変わった時にでも
幼虫時代の記憶は残されていることが確認されています。

蛹の外の環境が良くない場合には
そのまま1年ほどじっとサナギの中で待機することもあります。

羽化は
気温24度以上、湿度は70%を超えると
羽化します。

蛹から羽化したノミ
宿主になる動物の動きや体温、呼気に含まれる二酸化炭素に反応して
宿主に飛びつきます。

ノミは
強力な筋力を備えた後脚で
体長の約60倍の距離、
約100倍もの高さを飛んで
動物に飛びつきます。

その一回の決死のジャンプで
後脚は大きくダメージを追い
その後は
同じような大ジャンプは出来なくなると言われています。

つまり
大ジャンプは
宿主である動物につくときの
生涯でたった一回なのです。

一度羽化すると
48~96時間以内に宿主に飛びつかないと
ほとんどの場合、死んでしまいます。

環境条件が良ければ
さらに数日生き延びることが出来ます。

ネコノミの体長は
オスで1.2mm~1.8mm
メスで1.6mm~2.0mmです。

ノミ成虫の栄養源は、動物の血液です。

動物に寄生すると
7分以内には吸血を開始します。

メスの吸血量は
オスの2倍です。

ノミの食事は、通常1日数回で、
ネコノミのメスは1日当たりの吸血量は平均13.6μl、
最高で体重の約15倍にも及ぶ血液を吸引します。

そのため
大量寄生では
猫が貧血になることがあります。
特に子猫の大量寄生では
貧血が起こりやすいです。

こちらは米国サウス・カロライナ州のランダー大学の
リチャード・フォックス氏Richard Foxが描いた解剖図

ネコノミの身体は
頭部・胸部・腹部に明確に分かれた構造になっています。

siphon13L_x550_x_700xlanwebs.lander.edu

ノミの成虫の目はよく発達しています。

頭部両側の触角窩に触覚がおさまります。
これで宿主の被毛に引っかからずに速やかな移動が可能となります。
口器は血を吸いやすい構造になっています。
口にある二つの小顎肢は、血を吸う部位を探す役割があります。
口器には、口針と呼ばれる皮膚に穴をあける器官があります。

リチャード・フォックス氏Richard Foxが描いた頭部の解剖図
siphon14L_x550_x_409xlanwebs.lander.edu
より詳細な解剖と機能については
次のリンクをご参照ください。
lanwebs.lander.edu

そして
36時間~48時間以内に産卵を開始します

産卵は、
4~9日以内にピークに達します。

一度ノミが宿主を決めたら
成虫のノミは死ぬまで
同じ宿主の上で過ごします。
別の動物に移ることはあまりありません。

成虫になってから
最長19か月間生きたノミが確認されています。
ネコノミの成虫は、
メスの85%、オスの58%が
50日間は宿主の体を離れることなくずっと同じ動物の皮膚の上に寄生しています。

でも

メスの15%、オスの42%は、宿主の体と寝床などの周辺環境の両方で生活して
宿主の体と環境とを行き来しているようです。
もう大ジャンプはできないので
宿主である動物がいつもの寝床などで寝ている場合だと思います。

ノミは、ぴょんぴょん飛び跳ねるイメージがありますが
実際には
匍匐してかなり素早く歩いています。

成虫の体表は

とても堅い鎧のようなキチン質の甲羅によって覆われていて
ある程度の圧力に対して耐えることができます。

ノミを潰すときにはある程度の力が必要です。

また、
体表に生えた棘毛は、
ノミ自身の体を宿主から落ちないよう固定する役割があります。

ノミが動物についているのを見つけた場合
環境中には少なくともその数十倍以上の卵や幼虫、蛹が周辺環境に生息しています。

これを説明するためのノミの各種フィギアが動物病院には溢れています。

幼虫と卵の模型
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成虫の模型
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ノミのライフサイクルの模型
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幼虫の模型
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蛹と繭の模型
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ノミと皮膚の模型
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さらには
こんなキットまであります。
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部屋の中にどれだけのノミが拡がっているかを体験するキット

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大きな箱になっていて
開くと
絨毯がでてきます。

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この絨毯の中に
ノミの卵と幼虫のフィギアが隠れているのです。

それを飼い主さんにさがしてもらう。
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ノミは
動物についているよりも
部屋の中には
はるかに多いノミたちがいる
ということを体験するキットでした。

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Source: ひかたま(光の魂たち)

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