最近話題(問題?)になった感染症内科医の岩田健太郎先生。
以前彼の講演を聞いたことがある。
岩田先生のすごいところは、パワーポイントなどのスライドを一切使わないところ。
スライドをほとんど使わない講演はあったが、まったく使わないというのは初めてだった。
トークだけで1時間もたせるというのは、非常に高いトーク力が要求されると思う。
スライド棒読みでも1時間話すのは大変なのに、これをスライドなし、しかも原稿なしでやるというのは、自分には無理である。
賛否両論ある岩田先生だが、たくさんの本を書かれていて内容はかなりためになる。
今回は岩田先生の光の部分にスポットを当てて、役に立った知識をいくつか紹介したい。
1. 医者として成長するために必要なこと
ずっと外来診療を続けているとマンネリ化してしまうこともある。
そのまま漫然と過ごしていれば成長が止まってしまうような気がして焦ってしまう。
最近、一流料理人の本を読んでいると「日々の作業がルーチンワークにならない…
医者としての能力はどうやって伸ばしていけばいいのだろうか。
そのために必要なのは、治療前に経過の予測を立てておくことなのだという。
治療開始前に患者の経過について予測を立てていなければ、自分の治療がうまくいったのか、うまくいかなかったのかわかりません。
毎回毎回、感染症の予後予測をやり、自分の予測と実際の患者のズレに自覚的でいれば、感染症診断能力は格段に高まっていきます。
詳細はこちら>>医者として停滞しないための勉強法
2. AIに代替されないための医師の働き方を考える
前回の続き。
最近AIの進歩によって人間の仕事が奪われることが心配されている。
医者も例外ではない。
【関連】落合陽一から皮膚科医が学んだこと
AI時代に医者はどんなプロを目指…
プロを名乗るためにはどのような能力が必要なのだろうか。
それはベストな選択肢を選べないときにプランBを出せる力なのだという。
プロとアマの違いに「手数」の差があります。ある感染症の「第一選択」を出すことは研修医でもできるでしょう。
しかし様々な理由から「理想的」な治療が提供でないときに、第二、第三の手と次々に代替案をひねり出せるのが、本当のプロです。
詳細はこちら>>AIに代替されないための医師の働き方を考える
3. 診断力を強化するためにどうしたらよいか?
最近かぜの診療についての本を読んでいると、序章の記載が目を引いた。
感冒症状のある患者を何も考えずにかぜと診断しても、ほとんどの場合は問題がない。
しかし数パーセントかぜでない患者が紛れ込…
コモンディジーズをみるとき、適当に流しがちになってしまう。
しかし「コモンな病気をみることができる」というのは案外難しのだという。
コモンな病気を診ることができるとは、恐ろしいまれな病気にさらされて健全な免疫をつけ、地雷を踏まない能力があってはじめて担保されるのである。
詳細はこちら>>診断力を強化するためにどうしたらよいか?【3つの方法】
4. マイナー科指導医の研修医教育論
以前皮膚科で研修した研修医が、4月から他科の常勤医師として赴任してきた。
こういうことがあるから研修医は侮れない。
今回はマイナー科指導医の研修医教育について書いてみる。
研修医の教育法
研修医の教育…
皮膚科医も研修医の指導に携わることがある。
しかしマイナー科の研修はメジャー科とは違ったものになる。メジャー科と違って一人前の戦力として育てる必要性が低いからである。
だからといって研修医を軽視していいわけではない。我々に大きな影響を及ぼす可能性があるからである。
そんなときに役立ちそうな考え方を学んだ。
研修医にここまで知っておこう、ここからは知らなくていいよ、みたいな境界線を示す。
これを外の世界がすかして見えるように意図的にやるわけです。
そして、広大な世界をちら見してもらってから「君はここまでやっておけばよいのだよ」と鷹揚にのたまうのです。
詳細はこちら>>マイナー科指導医の研修医教育論
まとめ
今回は岩田先生の著書で印象的だった部分をまとめてみた。
ところで感染症治療の現場は、岩田先生たちの啓蒙のお陰でかなりよくなっていると思う。
今ではセフェム系抗菌薬の1日3回点滴は常識だが、自分が研修医のときはまだ普及していなくて病棟看護師からの抵抗が強かった。
そのため朝夕の2回以外のイレギュラーな点滴は、全部主治医がつながなければいけないルールになっていた。
毎日6時、14時、22時に点滴をつなぎに行くのは現実的に困難で、しかたなく2回投与にすることも多かった。
今はそんなことはなくなっている。
岩田先生たちに感謝。
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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