「アライグマの『ゾンビ』に住民騒然」という記事がネットを騒がせているようです。
アライグマは通常、警戒心が強く、人目を避けて夜間に活動する動物だ。だが、米オハイオ州ではアライグマの異常な行動が相次いで目撃されており、警察は日中に出現して周囲を威嚇するこの野生動物の奇妙な行動を報告している。
地元テレビ局WKBNによると、オハイオ州ヤングスタウン(Youngstown)の警察はこの2週間、アライグマの「ゾンビ」を目撃したという住民からの通報約15件に対応したという。
目撃者らの話では、アライグマは人に対して攻撃的な姿勢を取り、怖がるそぶりも見せず、音や身ぶりで追い払おうとしても全く動じなかったという。
元銀行員で、現在は自然写真家として活動するロバート・コグスホール(Robert Coggeshall)さんは、自宅の庭で飼い犬と遊んでいたところに現れたアライグマの「極めて異常な行動」について、WKBNの取材に次のように述べている。
「アライグマは後ろ足だけで立ち上がった。こんなことをするアライグマを見たのは初めてだ。牙をむいたと思ったら今度は後方に倒れ、昏睡(こんすい)状態のようになった」
「その後、アライグマは意識を取り戻して歩き回ったが、また同じ事をした。後ろ足で立ち上がり、牙をむいた」
コグスホールさんが撮影した、立ち上がり、口をゆがめ、唾液を滴らせているアライグマの写真はインターネット上で急速に拡散した。
このアライグマは最終的に安楽死させられた。同地域に現れた他のアライグマにも同様の措置が取られたという。
オハイオ州の環境保護当局はアライグマの異常行動の原因について、狂犬病の地域的な発生は否定した上で、犬ジステンパーが疑われると指摘している。
イヌに典型的に見られるウイルス性感染症の犬ジステンパーだが、野生動物の個体群で拡散することもある。(c)AFP
興味深いですね。
ジステンパーが疑われているとありますが、この「ゾンビ」は「死にまね反応」の可能性もあると思います。では「死にまね反応」について説明しましょう。
死にまね反応
極度の恐怖や直面しているストレスから逃れることが不可能な場合(強烈な疼痛、愛する家族が突然死んでしまった、など)、防御反応とは逆の死にまね反応(playing-dead response)が起こります。
この反応は「狸寝入り」という言葉があるようにタヌキやオポッサムでよく見られますが、戦うことも逃げることもできなくなった時に「死んだふり」をすることです。
しかし、彼らは死んだふりをして騙してやろうと考えているわけではなく、反射的にそうなってしまうのです。
人間にもこの死にまね反応は起こります。脳の視床下部という所に防衛反応を引き起こす中枢がありますが、そのすぐ隣に死にまね反応を起こす中枢があります。
ここが興奮すると副交感神経の緊張が亢進して、心拍数の減少と血圧の低下、そして血圧の低下によって脳血流が減少し、失神(卒倒)を生じる場合もあります。
いわゆる迷走神経性失神もこの死にまね反応の範疇に入り、病院ではしばしば見かけます。大きな検査を受けなくてはならない患者さんは「痛いのではないか」「苦しい検査なのではないか」と恐怖を感じています。
一方で理性では「ちゃんと病気を診断してもらうためにはこの検査を受けなくてはいけないんだ」「逃げ出すなんてみっともない」と思っています。
恐怖と理性との板挟みとなり、前述のように、ストレスから逃れることが不可能になって死にまね反応が引き起こされてしまいます。血圧の低下と脳血流の減少によってめまいや吐き気を生じます。
<みるよむわかる生理学 岡田隆夫著 医学書院 「Column 26 防衛反応と死にまね反応」より抜粋>
じつは私も犬を驚かせたところ、この「死にまね反応」が起きてびっくりした経験があります。この「死にまね反応」、人間にも起こるというのも面白いですね。
Source: 内科医「コンソン」の意外と知らない医療のハナシ
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