紫色の尿はみたことあるでしょうか?多くはないのですが、たまにあります。実際の色はこんな感じです。
名前もついていて、「紫色蓄尿バッグ症候群」といいます。
尿路で繁殖した細菌が、尿中の物質を分解して、それが混ざって紫になるようです。原因は、慢性的な尿路感染や便秘が原因とのことですが、発熱などがなければ抗生剤の投与は必要ないと書いてあるものにあるようです。そう多く見かけることはないと思いますが、老人病院などでたまに見かけることがあります。
Purple urine bag syndromeは治療すべきか?
Purple urine bag syndromeとは,膀胱カテーテル留置中の蓄尿袋が紫色に着色される現象を指す。これのみでは治療の対象とはならない。〔推奨グレードC2〕
Purple urine bag syndrome(紫色蓄尿バッグ症候群)は,Barlowら1)によって最初に報告された,蓄尿袋が紫色に着色される現象(図)を指す。この現象は,慢性便秘を有し,長期膀胱留置カテーテル管理の離床の困難な高齢者にみられることが多い。
Deallerら2)は,その着色物質がインジゴ青(一般的にはこれがインジゴと呼ばれている)やインジゴ赤(インジルビン)であることから,トリプトファン代謝にかかわる生合成経路に注目し,その発生機序を推論している。すなわち,必須アミノ酸の一つであるトリプトファンは,腸管内において腸内細菌によりインドールに分解される。インドールは腸管から吸収され,無害なインジカンに代謝されて尿中に排泄される。そこに尿路感染が合併していると,尿中の細菌によりインジカンは加水分解を経てインドキシルに変換される。インドキシルは2分子が縮合し,酸化されるとインジゴ青となる。一方,インドキシルは酸化によりイサチンに変換され,その2分子が縮合してインジゴ赤(インジルビン)になる。これらの反応には,いずれも細菌の関与が必須であり,Providencia stuartii,Klebsiella pneumoniae およびEnterobacter agglomerans などが,インドキシルからインジゴやインジルビンに変換する酵素活性を有する。このような経路で産生されたインジゴ青やインジゴ赤は,蓄尿袋や接続チューブ類を構成するプラスチックポリマーに付着しやすいため,purple urine bag syndromeが生じるものと考えられている。
Purple urine bag syndrome自体は治療の対象とはならないが,慢性便秘や排尿管理に対する適切な対応が重要である3)。
参考文献
1) | Barlow GB, Dickson JAS. Purple urine bags. Lancet 1978;1:220-221(V) |
2) | Dealler SF, Hawkey PM, Millar MR. Enzymatic degradation of urinary indoxyl sulfate by Providencia stuartii and Klebsiella pneumoniae causes the purple urine bag syndrome. J Clin Microbiol 1988;26:2152-2156(III) |
3) | 津村秀康,佐藤威文,黒坂眞二,藤田哲夫,松本和将,馬場志郎.Purple urine bag syndromeの臨床像に関する検討.泌尿紀要 2008;54:185-188(V)
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Source: 内科医「コンソン」の意外と知らない医療のハナシ
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