明日からの診療に役に立つ貧血の見方(大球性貧血の巻)
皆さん。こんにちは。アクセス数も大分増えてきました。読んでいただき有難うございます。皆さんへの貢献は私の喜びでもあります。
今回は、貧血の見方を説明しましょう。
WBC 7000/ul →増加か減少か。(二系統の異常で血液疾患を疑う=MDS, Leukemiaなど)
RBC 194万/ul
Hb 9.0g/dl→貧血の程度、慢性に進行か急性に進行かを判断する。
MCV 134 →大球性か小球性か 大球性ならVitB12、葉酸欠乏、小球性なら鉄欠乏性貧血を疑う。
PLT 17万/ul→増加か減少か。(二系統の異常で血液疾患)
LDH→増加していれば血液疾患を疑う(ただし増加していても絶対ではない。)
症例1
60歳、男性
8年前、胃癌にてT中央病院にて胃全摘術施行、その後貧血がひどく治療しているが改善しない。
初診時検査
WBC 6980
Hb 9.1
MCV 129
血液像;erythroblast, 奇形赤血球
追加検査
LDH 491↑
vitB12 163↓ VitB12欠乏性貧血していた。
診断;巨赤芽球性貧血
胃癌手術後ー1年で鉄欠乏性貧血、3-5年でvitB12欠乏性貧血となる。
葉酸欠乏は少ないが稀にある。基本的に長期に渡る摂取不足(高齢者、アルコール中毒者)
症例2
82歳、女性
片頭痛、変形性頚椎症にて療養病床に入院中。貧血の精査依頼。造血剤を投与しているが改善しない。
8年前に胃癌の手術をしている。今回施行した大腸、胃の検査は異常なし。
初診時検査
WBC 3710/ul
RBC 241万/ul↓
Hb 8.3g/dl↓
MCV 105↑
plt 13.5万
血液検査精査
LDH 173 →
vitB12 4629 ↑
葉酸 2.2↓ 葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血
ferritin 1816→ 鉄過剰投与による二次性ヘモクロマトーシスになる危険あり。
貧血ということだけで、漫然と鉄剤を点滴投与されていることがしばしばあります。
症例3
60歳 女性
二ヶ月前より顔面腫脹、全身倦怠感あり。一ヶ月前より黄疸出現し、X月19日に近医受診。
採血にて溶血性貧血を疑われて当院紹介される。
初診時血液検査
WBC 1810/ul↓
RBC 124万/ul↓
Hb 4.7g/dl↓
MCV 126↑
MCHC 30.1
plt 15.0万
初診時生化学検査
AST 47
ALT 16
LDH 2898↑
T-bil 2.5↑
鑑別診断
大球性貧血→巨赤芽球性貧血(vitB12, folate, MDS)
溶血→自己免疫性溶血性貧血、巨赤芽球性貧血、SLE etc.
LDH高値→溶血、白血病、MDS
検査結果
葉酸、VitB12正常。
骨髄所見;赤芽球系増加、芽球はなし。
ANA 陰性、直接クームス、間接クームス陰性にて自己免疫性溶血性貧血、SLEの証拠は得られず。
胃内視鏡検査、異常なし。
経過
自然寛解に向う。
紹介した医師に治療を尋ねる。初診時に「ビタミン剤の注射しました。」ということであった。
点滴にメチコバールが含まれていたことが判明。
診断は、vit B12欠乏性貧血と診断できた。
教訓
進行した巨赤芽球性貧血は、あたかも白血病の所見になる。血液の専門医でも分かりません。
紹介元の先生の治療をよく状況を聞いてみることが大事です。
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当院研修医のブログ ⇒ 真生会富山病院の後期研修医ブログ
Source: 真生会富山病院 血液内科医の「明日から役立つ血液学」
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