明日からの診療に役に立つ血液学その5(大球性貧血の巻)

内科医

明日からの診療に役に立つ貧血の見方(大球性貧血の巻)

皆さん。こんにちは。アクセス数も大分増えてきました。読んでいただき有難うございます。皆さんへの貢献は私の喜びでもあります。
今回は、貧血の見方を説明しましょう。

WBC  7000/ul 増加か減少か。(二系統の異常で血液疾患を疑う=MDS, Leukemiaなど)

RBC 194/ul

Hb 9.0g/dl貧血の程度、慢性に進行か急性に進行かを判断する。

MCV 134 大球性か小球性か 大球性ならVitB12、葉酸欠乏、小球性なら鉄欠乏性貧血を疑う。

PLT 17/ul増加か減少か。(二系統の異常で血液疾患)

LDH増加していれば血液疾患を疑う(ただし増加していても絶対ではない。)

症例1 

60歳、男性

8年前、胃癌にてT中央病院にて胃全摘術施行、その後貧血がひどく治療しているが改善しない。

初診時検査

WBC 6980

Hb 9.1

MCV 129

血液像;erythroblast, 奇形赤血球

追加検査

LDH 491

vitB12 163   VitB12欠乏性貧血していた。

診断;巨赤芽球性貧血

胃癌手術後ー1年で鉄欠乏性貧血、3-5年でvitB12欠乏性貧血となる。

葉酸欠乏は少ないが稀にある。基本的に長期に渡る摂取不足(高齢者、アルコール中毒者)

症例2 

82歳、女性

片頭痛、変形性頚椎症にて療養病床に入院中。貧血の精査依頼。造血剤を投与しているが改善しない。

8年前に胃癌の手術をしている。今回施行した大腸、胃の検査は異常なし。

初診時検査

WBC 3710/ul

RBC 241/ul

Hb 8.3g/dl

MCV 105

plt 13.5

血液検査精査

LDH 173 →

vitB12 4629

葉酸 2.2  葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血

ferritin 1816 鉄過剰投与による二次性ヘモクロマトーシスになる危険あり。

貧血ということだけで、漫然と鉄剤を点滴投与されていることがしばしばあります。

症例3

60歳 女性

二ヶ月前より顔面腫脹、全身倦怠感あり。一ヶ月前より黄疸出現し、X月19日に近医受診。

採血にて溶血性貧血を疑われて当院紹介される。

初診時血液検査

WBC 1810/ul

RBC 124/ul

Hb 4.7g/dl

MCV 126

MCHC 30.1

plt 15.0

初診時生化学検査

AST 47

ALT 16

LDH 2898

T-bil 2.5

鑑別診断

大球性貧血→巨赤芽球性貧血(vitB12, folate, MDS)

溶血→自己免疫性溶血性貧血、巨赤芽球性貧血、SLE etc.

LDH高値→溶血、白血病、MDS

検査結果

葉酸、VitB12正常。

骨髄所見;赤芽球系増加、芽球はなし。

ANA 陰性、直接クームス、間接クームス陰性にて自己免疫性溶血性貧血、SLEの証拠は得られず。

胃内視鏡検査、異常なし。

経過

自然寛解に向う。

紹介した医師に治療を尋ねる。初診時に「ビタミン剤の注射しました。」ということであった。

点滴にメチコバールが含まれていたことが判明。

診断は、vit B12欠乏性貧血と診断できた。

教訓

進行した巨赤芽球性貧血は、あたかも白血病の所見になる。血液の専門医でも分かりません。

紹介元の先生の治療をよく状況を聞いてみることが大事です。


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Source: 真生会富山病院 血液内科医の「明日から役立つ血液学」

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