ステロイド治療への疑問に答える
あるマイナー科の先生からの質問に答える形で行った講義をもとにして、ステロイドの使用方法についてまとめてみました。
日常的に分かっているようで、案外何となく使用しています。uptodateに根拠は一応ありましたが、専門科の文化みたい
なものもあります。
パルス療法(メチルプレドニゾロン)1000mg x 3日間
大量療法 1mg/kg から100mgで開始
中等量 0.5mg/kgで開始
少量 30mg未満で開始
力価
常識ですが、内科以外では、知らない先生もチラホラあります。
コルチゾール 1
プレドニン 4
メチルプレドニゾロン 5
デキサメタゾン 25
ベタメタゾン 25
研修医N先生よりの質問
質問1 (投与方法)
生食などは使わず、5%ブドウ糖液250 or 500mLで1~2時間で点滴3日間が基本でしょうか。
答え1
パルス療法でも、高用量のプレドニンでも生食100mlでよいと考えます。
問い2
パルス療法後療法は翌日から常に必要か。パルスのみして、1週間後にまたパルスはおかしいでしょうか。
答え2
問題ありません。膠原病などは、パルス療法の後に1mg/kg程度のプレドニンを使用しますが、眼科疾患では必要ないでしょう。パルス療法は即効性、治療期間の短縮を目的にしています。
問い3
パルス後療法の開始量はPSL 60、40、30mg/dayが多いようだが、疾患別、年齢別、体重別などでなんとなく経験的に判断?他の先生の投与方法をマネするのみ?
答え3
前述のようにパルス療法後に、ステロイドのtaperingが必要な場合は、1mg/kg程度が一般的です。
自己免疫疾患は、しっかりと投与が必要です。高齢者は代謝が落ちていますので、それより減量した方がよいです。
高齢者は、一般的には7割から8割くらいに減量すると思います。
質問4
大量にステロイド投与しても、数日間の短期なら、投与後3日以内に血中コルチゾール値は元どうりに回復しているらしいが、回復するまでの1~2日は安静にしてストレス避けるべきか?
答え4
ステロイド大量療法中は、原則入院安静です。血圧の上昇、糖尿病のある人なら血糖の上昇などさまざまな合併症が起きる可能性があります。
質問5
ステロイドパルス療法は基本はメチルプレドニゾロン(ソルメドロール)1000mgだが、500mg、200mgなどでもいいかどうかはやってみるしか分からない?PSL1~2mg/kg/day程度で体内のほぼすべてのステロイドレセプターが飽和するらしいが、パルスだとT細胞アポトーシスを誘導するパルスならではの作用がある(?)から、100mg内服よりも速効的なのか?
答え5
病状によっては、ハーフパルスと言いまして、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)500mgを3日間とか使用することがあります。明確な基準はありません。高齢者ほど代謝が遅くなりますので、同じ量使用した場合、効果は増大します。また量が増加すればする程、その効果は大きくなります。パルスはプレドニン100mgより効果は当然大きくなります。
問い6
一般的に安全に離脱するには10%の減量毎に、少なくとも4日ずつかけるべきらしいが、PSL60mg→50→40→30を1週間毎よりも60→55→50→45→と3~4日毎くらいで小刻みにするべき?15→10→5は異常な漸減方法?PSLの血中濃度は2時間でピーク、1日かかって緩やかに消失するらしいが、隔日投与は取り入れるべきか?
答え6
減量の方法(uptodate)
PSL >40mg; 5-10mg/dayで1−2週間毎に減量
PSL 20-40mg; 5mg/dayで1-2週間毎に減量
PSL 10-20mg; 2.5mg/dayで2-3週間毎
PSL 5-10mg; 1mg/dayで2−4週間毎
問い7
感染症対策として、パルス前にB型肝炎、結核の検査は必須か?
漸減中にCRPとLDHは週1回測定?胸部X線は月1回測定が必要か?
PSL 20mg/day以下になるまでは人ごみを避けるよう生活指導すべきか?
答え7
ステロイドパルス療法は、免疫抑制療法になるので、HBVはチェックしなければなりません。結核については胸部レントゲンでよいです。
月一回の血液検査は必要ですが、胸部X-pは症状があればでよい。
人ごみを避ける指導は必要です。
問い8
副腎不全症状(易疲労感など)はショックさえおこさなければたいして危険ではない?
倦怠感あるときにはPSL1錠屯服で追加?病院に来させるべき?
答え8
taperingに伴う症状は、普通は2−3日で消失していきます。追加処方の必要は滅多にありませんが、どうしても我慢できない時は、もとの量に戻すこともあります。
問い9
漸減せず、投与量を急に0としない限り、副腎不全ショックは極めて稀らしいが、どの程度稀?
答え9
3週間以内のステロイド治療は、量を問わず、副腎不全は起きないと言われている。(uptodate)
問い10
生理的なコルチゾール分泌量20mg/dayでPSL5mgと同等らしいが、ストレス下ではどれくらい自力でコルチゾール分泌できる?PSL何錠分くらい?
答え10
ACTH連続負荷試験では、正常の2-4倍にコルチゾールが増加します。ストレス時にはそれくらいは、増加するでしょう。
問い11
コーヒー1杯飲むと、PSL1錠分くらいのコルチゾール分泌が起こるらしいが、
例えば、1日に5杯飲む人はPSL5錠毎日分5で飲んでるような状態?
答え11
これは、あり得ません。都市伝説です。
コーヒー5杯飲む人は、みなクッシング症候群になってしまいます。
問い12
サルコイドーシスについて
疑った場合は致死的な心サルコイドーシスを否定するために内科受診させるべき?
答え12
サルコイドーシスの死亡原因の60%は心サルコイドーシス(刺激伝動障害)です。
一度、内科受診(循環器内科)を勧めて下さい。
問い13
ベーチェットについて
難治性ぶどう膜炎でインフリキシマブを導入する場合は、内科で感染症などリスク管理してもらうべき?
答え13
結核や呼吸器疾患の厳密な除外が必要ですので、内科紹介して下さい。
問い14
慢性炎症疾患について
そもそも3~6ヵ月程度のステロイド内服でおさまるような疾患は慢性ではないのか?
眼科では原田病(全身のメラノサイトへの自己免疫疾患)で6ヵ月程度の投与はあるが、
1年超えてステロイド内服続けるような疾患はない。
答え14
3−6ヶ月のステロイド治療を要するなら、立派な慢性疾患です。全身性エリテマトーデスも6ヶ月程の治療です。その後は維持量を投与することになります。
当院のHPはこちら ⇒ 真生会富山病院
当院研修医のブログ ⇒ 真生会富山病院の後期研修医ブログ
Source: 真生会富山病院 血液内科医の「明日から役立つ血液学」
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