この国の試練

内科医

 海外旅行はおろか,国内旅行すら行けないステイホーム週間になろうとは,つい数ヶ月前には予想さえできませんでした.そしておおかたの予想通り,この緊急事態宣言,結局5月末まで延期されました.

 すでに国内の累計感染者数が15,000人を超えた新型コロナウィルス感染,神戸市でも中央市民病院や赤十字病院など基幹病院が次々と院内感染を起こして機能不全に陥ったり,介護施設からも感染者が出るなど,医療介護体制が逼迫しつつあるのを肌身で感じます.

 クリニックでもコロナウィルス感染を否定できないような発熱や咳嗽の患者を診る機会も増え,さらなる感染防止策を強いられています.
 受付にはシールドを手作りし,私も診療中はN95のマスクを常用するようになりました.さらに感染疑いの患者は可能な限り診療の終わり頃に来院してもらい,ゴーグルやフェイスシールド,ガウン等の完全防備で診療,その後クリニック全体の換気と主だったところの消毒を行うなどしていますが,私はもちろんスタッフにも感染者を出すわけにはいかず,緊張を強いられます.幸いまだ当院から感染者が出たことはありませんが,今後も全く気は緩められません.

 それにしても,国難ともいえるこの未曾有の危機に際して今回またしても露呈してしまったのは,日本政府の危機管理能力,迅速な意思決定能力の低さです.

 首相の言葉はいつも美辞麗句に満ち溢れ,丁重な姿勢で国民に強い決意を促してはいますが,具体的なことになると,いつも「慎重に判断する」とか「専門家の意見を聞いて適切に判断」とか,相変わらず曖昧な言い回しに終始しています.
 感染を抑え込むためには自粛が必要なのは誰しも耳にタコができるほど聞いている,けれども,ではその間の収入補償にはどんな政策があるのか?どのような状態になれば自粛が解除されるのか?全て明確にせよとは言いませんが,見通しについてさえ全然説明がないのです.このところの数多のスキャンダルで国民の信頼が失墜しつつあった矢先ですから,首相の言葉も空虚に聞こえてしまうのも尚更でしょう.

 かたやフィリピンのドゥテルテ大統領しかり,ニュージーランドのアーダーン首相しかり,台湾の蔡英文総統しかり,ニューヨークのクオモ知事しかり,そして大阪の吉村知事しかり,普段からの信頼感をベースとして,逆境に打ち勝つための強い決断力とスピード感のある処方箋,なによりも明確でわかりやすい言葉で苦しむ人々に身を削って寄り添う姿勢が見られ,人々が自然に団結するわけです.

 自粛を要請されても無視して旅行や温泉に行ったりパチンコがやめられない人間も一部にはいますが,私たち善良な日本人のほとんどは,諸外国のように罰則を伴うロックダウンなどされなくても,真面目にステイホームを守り,少しでも快適に生活できるようにささやかな工夫をして耐えているわけです.
 当初諸外国は,こんな甘い規制で大丈夫なのかとバカにしてきましたが,欧米では厳しいロックダウンをしても感染爆発が防げず医療崩壊し,何千人,何万人もの屍を築いているのに,日本の死者の絶対数は数百人,人口に対する比率は世界最低レベルです.

 自画自賛かもしれませんが,これは今まで数多くの自然災害に見舞われても辛抱強く這い上がって来た我々日本人の,世界に誇れる素晴らしい民度,衛生意識,そして国民皆保険制度の故だと思います.

 でも,今の政府はそんな日本人の辛抱強さに甘えているとしか思えません.他の国のように暴動やデモなんか起こさないだろうと,タカを括っているわけです.

 400億円以上もかけた不評のアベノマスクも,迷走に迷走を重ねてようやく決まった国民一律十万円もいつ手に届くかさえわからない.様々な支援策も打ち出されてはいますが手続きや支給条件が煩雑でスピード感が全く感じられない.すでに数多くの企業や店舗がドミノ倒しのように倒産や閉鎖の危機にさらされており,今すぐにでも大規模な経済的支援がなければ,日本経済が完膚なきまでに打ちのめされるのは目に見えているのに,です.

 アルバイトが出来なくなったり親の収入が激減して学費が支払えずに退学さえ余儀なくされている大学生も増えているとのこと,これからの日本の社会を背負う若い人たちを大事にせずして,どうして国の未来を語れるでしようか?

 さらに経済だけでなく,PCR検査の少なさ,医療体制の逼迫,感染者やその家族への偏見,いわゆる自粛ポリス問題など,さまざまな喫緊の問題が山積しているのも言わずもがなです.

 このコロナショックは,テレワークやオンライン診療,オンライン授業などのIT環境の整備,脱ハンコ,キャッシュレス決済のさらなる普及など,今までがんじがらめの規制や旧態依然とした政治体制に支配されて全く進まなかった変革を,くしくも一気にもたらす可能性があるという意味では,災い転じて福となす絶好のチャンスとも言えます.

 しかし私は,もうこの際どうしようもなく堕落しきったこの国の政治のしくみそのものを全てリセットするチャンスにして欲しいとさえ思います.

 庶民の痛みなどわからない年寄りの政治家ばかりが長年ふんぞり返り,利権にまみれ,忖度ばかりを繰り返して不毛な議論のみに時間を費やしている姿は醜く,血税を食い物にしているとしか思えません.

 私は,もう国会議員は今の半分でいい,普段から庶民の数倍も出ている給与もこんな緊急事態の時くらいは国民の痛みが判るように半分くらいにしていい,そして定年を超えた議員や仕事をしない無能な議員はさっさと引退してもらうべきだと思います.
 そして年齢や学歴に関係なく,優秀な人材は男女の別なくどんどん採用する,そうしなければもうこの国は世界の三流国に成り下がってしまうでしょう,いやもう,すでに政治は三流以下かもしれません.

 明治維新から150年余り,この未曾有の国難を令和維新とでもいうべき変革のチャンスに出来るか,あるいはこのまま果てしなく劣化し続けて世界から取り残されてしまうか,まさに今私たち日本人の決意が問われているのではないかと思います.


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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