とびひ(伝染性膿痂疹)のホームケア。消毒液は有効ですか?

この夏、たくさんの「とびひ」を診ました。
アトピー性皮膚炎の子どもをたくさん診ているためだと思います。

「とびひ」は、医学用語でいうと「伝染性膿痂疹」といいます。
夏の小児科外来ではよくある病気です。

今回は、とびひの治療について、病院でできる治療と、家でできる治療(ホームケア)とを考えてみます。

とびひ(伝染性膿痂疹)とは

とびひは伝染性の皮膚感染症で、通常は2歳から5歳までの子供がかかります。
それ以上の年齢の子供や大人も発症することがあります。

健康な皮膚に細菌が侵入したり、小さな切り傷や擦り傷、虫刺されの場所に細菌が侵入したりすると、感染が進行します。
アトピー性皮膚炎にとびひが多いのは、皮膚を掻くことで傷ができるためだと考えられます。

とびひは、暖かく、湿度の高い環境で起こりやすいです。
人が密集していると、容易に感染が拡大します。

参考:Up to date: Patient education: Impetigo (Beyond the Basics)

病院でできるとびひ(伝染性膿痂疹)の治療法

治療の基本は抗菌薬療法です。
これは、外用(塗る)と経口(飲む)があります。
以下参考:コクランレビューUp to date

外用抗菌薬

病変が浅く、少数である場合は、Up to dateでは外用抗菌薬が奨められます。
外用抗菌薬はプラセボ(薬用成分の入っていない、偽物の薬)より効果が高いことが分かっています。
(ちなみに、プラセボクリームによるとびひの治癒率は7~10日後の8~42%と報告されています)

フシジン酸外用薬(フシジンレオ®)は、とびひに有効です。
しかしながら、フシジン酸に対する黄色ブドウ球菌の耐性が増大してきています。
そのため、Up to dateには「治療としてはあまり好ましくない」と書かれています。
コクランレビューでは、「経口抗菌薬と同等か、それ以上に有効である可能性がある」と記載されています。

ムピロシン(バクトロバン®)は、フシジン酸外用薬と同様に、疾患が広範囲でない場合では経口抗生物質と少なくとも同等の効果があるとコクランレビューに記載されています。

キノロン系外用剤のオゼノキサシン(ゼビアックス®)は、2017年に米国食品医薬品局(FDA)により、とびひの治療薬として承認されました。
ただし、細菌薬剤耐性を促進する可能性があり、さらなる研究が必要だとUp to dateには書かれています。

同じキノロン系抗菌薬としては、ナジフロキサシン(アクアチム®)も有名です。
Up to dateとコクランレビューに記載はありません。

内服抗菌薬

病変が深かったり、多発していたりする場合は、Up to dateでは経口抗菌薬が奨められます。
ただし、この根拠は明確ではないようです。
コクランレビューでは「広範囲なとびひに対して、経口抗菌薬が外用抗菌薬よりも優れているかどうかは不明である」と書かれています。
小児感染症のトリセツREMAKEでは、蜂窩織炎、毛嚢炎、皮下膿瘍、化膿性リンパ節炎を合併したときや、病変数が多いとき、アウトブレイクしているときは、経口抗菌薬を使用するとあります。

いっぽう、消化器症状の副作用は経口抗菌薬で多いことがコクランレビューに記載されています。

内服抗菌薬では、セファレキシン(ケフレックス®)の7日間内服が基本です。

MRSAの場合は、ST合剤(バクタ®)が基本です。
Up to dateにはクリンダマイシンドキシサイクリン(ビブラマイシン®)の記載もあります。
ドキシサイクリンは、他のテトラサイクリン系薬剤に比べて8歳未満の小児での永久歯変色リスクが低いという記載もあります。

Up to dateでは、キノロン系の経口抗菌薬は、耐性菌が発現する可能性があるため、使用すべきではないという記載があります。

病院でできるとびひ治療まとめ

外用抗菌薬は有効です。
内服が外用に優れるというエビデンスはなく、耐性菌や副作用の懸念は経口抗菌薬のほうが高いです。

以上から、外用抗菌薬を主軸にした戦略が良いと考えられます。

とびひのホームケア

ここまで、病院でできる治療について書いてきました。
外用にせよ、内服にせよ、抗菌薬は病院に行かなければ手に入りません。

では、家でできることはないのでしょうか。
予防と治療の面で考えてみましょう

家でできるとびびの予防

とびひは、人から人へ、皮膚と皮膚の直接の接触によって広がります。
とびひにならないようにするために、最も重要なことは、感染している人に触れた直後に石鹸と水で手を洗うことです。
手洗い場が近くにない場合は、アルコール消毒も有効です。

もしお子さんがとびひになったとき、きょうだいや家族、保育園の友達に移さないために、次のことを気をつけましょう。

  • 手を石鹸と水でこまめに洗い、できないときはアルコール消毒を使用しましょう。
  • タオル、衣類、ヘアゴムなどを共有しないようにしましょう。
  • タオルやシーツを洗いましょう。
  • 感染している部分を絆創膏や包帯で覆いましょう。
  • 鼻をかんだ後は、必ず手を洗いましょう。
  • くしゃみをするときは、手ではなく、腕や肩などにくしゃみをしましょう。

参考:Up to date: Patient education: Impetigo (Beyond the Basics)

家でできる治療:消毒液について

外用抗菌薬の代わりに、イソジンで消毒できたら、とびひは家で治せるんじゃないか。
そう考えたのですが、意外なことに、消毒液ととびひに関する研究はほとんどありません。

There was a lack of evidence for the benefit of using disinfectant solutions.
When 2 studies with 292 participants were pooled, topical antibiotics were significantly better than disinfecting treatments (RR 1.15, 95% CI 1.01 to 1.32).

There is a lack of evidence from RCTs for the value of disinfecting measures in the treatment of impetigo, as a sole or supplementary treatment.

The relative absence of data on the efficacy of topical disinfectants is a research gap that needs to be filled.
These agents may not contribute to antibiotic resistance, and they are cheap.
This research may be of particular importance for developing countries.

Interventions for impetigo. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 2012: CD003261.

消毒液がとびひに有効というエビデンスはなく、外用抗菌薬のほうが消毒液よりも優れていた、とあります。
ただ、あまり大きな差ではありません。
消毒液の効果に関する大きな研究がないので、消毒液が本当にとびひに効果がないのか、それとも実はあるのかは、まだ分かっていません。

むしろ、「消毒液は安く、手に入りやすく、何よりも薬剤耐性菌を作らないから、消毒液についてもっと研究すべきだ」とコクランレビューに記載されています。
たとえば、夜間や休日の応急的なホームケアとしては私は良い作戦ではないかと考えます。

まとめ

治療に関しては、病院でもらった抗菌薬の塗り薬のほうが、エビデンスが高いのは事実です。
ですが、夜間や休日に応急的に消毒液を使って、絆創膏や包帯で覆うというホームケアは良いと思います。

診療所や病院の診療時間になれば、受診し、抗菌薬の塗り薬または飲み薬を処方してもらいます。
きょうだいや家族、保育園の友達に移さないためにも、以下の予防をしましょう。

  • 手を石鹸と水でこまめに洗い、できないときはアルコール消毒を使用しましょう。
  • タオル、衣類、ヘアゴムなどを共有しないようにしましょう。
  • タオルやシーツを洗いましょう。
  • 感染している部分を絆創膏や包帯で覆いましょう。
  • 鼻をかんだ後は、必ず手を洗いましょう。
  • くしゃみをするときは、手ではなく、腕や肩などにくしゃみをしましょう。

Source: 笑顔が好き。

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