■鼻に入れたプロテーゼの耐用年数は20~30年
50代の女性Gさんは、約35年前に某美容外科にて鼻にL型のプロテーゼを入れました。
術後半年後くらいから、右の鼻の穴の入り口付近にイボのような小さなでっぱりがあるのに気づきましたが、目立たないのでそのまま放置していました。
このでっぱりの原因は2つ考えられます。
プロテーゼを入れる手術の際に、右の鼻の穴の少し内側を切開して、そこからプロテーゼを挿入します。その際の傷跡がケロイドのように盛り上がる肥厚性瘢痕の可能性があります。あるいは、中のプロテーゼがずれて、鼻の穴の内側にその輪郭が浮き出てきていることも考えられます。
当院でよく診察した結果、Gさんの場合は、肥厚性瘢痕が原因であることがわかりました。
また、Gさんは5年前くらいから鼻筋のつっぱり感・違和感を感じるようになり、鼻根部を触るとごつごつした凹凸状のしこりを触れるようになりました。
この凹凸状のしこりは、プロテーゼの石灰化が原因です。通常、20年以上にわたり、長期にプロテーゼなどの異物を埋め込んでいると、異物に石灰が沈着して、しこりとして触れたり、鼻筋が凸凹になることがあります。
Gさんの初診時の鼻の状態です。一見すると目立つ凹凸はありませんが、鼻根部を触ると、ごつごつした小さなしこりを多数触れます。プロテーゼの石灰化がおきている症状です。つっぱり感や違和感も石灰化が原因です。
また、長期にわたって異物を入れていると、異物が周りの組織を圧迫し続け、それにより、皮下脂肪は溶けてなくなり、皮膚も薄くなって、プロテーゼの輪郭が浮き立ってきたり、鼻筋が異常にてかって見えたり、皮膚が白っぽく変色したりします。
Gさんの鼻も、プロテーゼの輪郭が不自然に強調され、鼻筋が異様に光って見えています。
■プロテーゼにより起こったトラブルに対し、プロテーゼ法では解決できません
鼻の隆鼻術で一番きれいに仕上がるのは、プロテーゼ法です。一番最初の鼻の美容形成はプロテーゼを使って行うのがベストだと、自己組織移植を専門にしている私も、その点は認めています。
しかし、プロテーゼは異物ですから、何十年も体内に入れ続けていると、後になっていろいろなトラブルが発生してくる可能性があります。
そのような場合に、プロテーゼを抜いて、また新たなプロテーゼを入れることで修正する医師がいますが、異物が原因で起こったトラブルを異物で解決できることはありません。異物を入れ続けている限り、また新たなトラブルが発生して、異物を取らなければならなくなります。
また、異物によって薄くなってしまった皮膚の厚みを戻すのは、自己組織以外の方法では無理です。
鼻にプロテーゼを入れ、何十年も経過した後に起こるトラブルの唯一の解決法は、「自己組織移植」のみなのです。
■プロテーゼにより起こったトラブルを解決する唯一の方法は、自己組織移植法です。
本来、人間の体の中に存在しない異物(プロテーゼ)を長年入れ続けることにより、以下のような様々なトラブルが発生します。
(1)プロテーゼがずれたり曲がったりする
(2)皮膚が異様にてかったり、赤くなったり白くなったり変色する
(3)プロテーゼの輪郭が浮き出てきたり、無表情になったり、不自然さが出てくる
(4)プロテーゼの石灰化により、しこりや凹凸が発生する
(5)感染を起こし赤くなって腫れる
(6)違和感や異物感が気になる
(7)プロテーゼを入れていることを他人に知られてしまう
(8)皮膚に穴が開いてプロテーゼが飛び出してくる
(9)プロテーゼのことを気にするあまり、精神的な問題が発生してしまう
これらのトラブルを解決するためには、原因となっているプロテーゼを抜き、自分の組織にそっくり入れ替える方法が唯一の方法です。
Gさんは、トラブルの原因となっているプロテーゼを抜き、自分の組織(軟骨と筋膜)に入れ替えることで、他人には気づかれずに、今の鼻の形をそのままキープする修正手術をおこないました。
上の写真は、左が術前、右が術後6か月の正面から見た状態です。
不自然な鼻筋のてかりが消え、ナチュラルな鼻に仕上がっています。
上の写真は、左が術前、右が術後6か月の横から見た状態です。
移植した組織の定着も良好で、鼻の高さも術前とほぼ同じ高さでキープできています。
上の写真は、左が術前、右が術後6か月の下から見た状態です。
鼻の穴の中の肥厚性瘢痕(矢印)の部分もきれいに削り取ることができています。
■20年以上、鼻の中に埋め込んだプロテーゼは中でどうなっているのか?
こちらが、約35年間埋め込まれていたGさんのプロテーゼです。
シリコン製のプロテーゼは本来、下の写真のようにきれいな白色ですが、長年の経過により劣化し、上のようなくすんだ色に変色してしまっています。
下の写真の矢印の部分にベロンとぶらさがっているのは、プロテーゼ被膜です。
プロテーゼ被膜とは、異物を体内に埋め込むと、その周囲を包むようにできる線維性の膜のことです。年数がたつと、被膜が縮み、変形や違和感の原因になることがあります。
上の写真の矢印の部分にゴツゴツした物体が付着しているのが石灰化した部分です。
長年、異物を体内に埋め込んでいると、異物が劣化、変性して、いろいろなトラブル症状を引き起こしてくることになります。
しかし、心配は無用です。被膜や石灰化している部分をすべてプロテーゼごときれいに取り出し、自己組織を移植することで、トラブルを解決することができます。
このようにして移植した自己組織は、もともとの自分の鼻の組織と一体化し、完全になじんでしまうので、触っても何も手術をしていない人の鼻と同じで自然です。人から触られても手術したことを気づかれることはありません。
硬いプロテーゼを入れている時にはできなかった、鼻すじをつまんだり、鼻先を指で押し上げてブタ鼻のようにすることもできます。
レントゲンを撮っても移植した組織が写ることもありませんし、年をとれば、周りの皮膚が老化していくのと同じように鼻も自然に年をとり、しわが刻まれていきます。
また、万が一ケガをして、鼻の部分が切れたり裂けたりしたとしても、中から異物が飛び出してくることもなく、何も手術をしていない人の鼻と同じように、傷口が自然にふさがり治ります。
つまり、何も手術をしていない人の鼻と同じ状態にもどせるわけです。
プロテーゼなどの異物が原因で発生したトラブルは、異物をきれいに抜き取り、代わりに自己組織を移植することで解決できます。
Source: Dr松下ブログ
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