もっと気軽にワクチンを

内科医

 このblogを書いている今頃にはすでに私も新型コロナウィルスのワクチン接種が済んでいてその話題でもとりあげようかと思っていたのですが,全くの予想外でした.

 先月末からようやく日本でもワクチン接種が始まりましたが,まだ病院クラスの医療従事者への接種が始まったばかりで,優先接種対象の高齢者への接種はおろか,私たち小規模医療機関の医療従事者への接種すら始まっていません.
患者さんたちからも,いつどのような形で始まるのか?当院でもやってくれるのか?など毎日のように聞かれるのですが,返答に窮してしまう状況です.

 クリニックでワクチンを打つにしても,保存時間の限られたワクチンを一定時間内に一定の人数に,しかも3週間隔で2回接種する必要があり,そのために無駄のないように予約を取らなければならない上,接種後15分から30分は状態観察をしなければなりませんし,キャンセルになった場合や副反応が起きた場合の対処も考えなければなりません.はっきり言って非常に煩雑で負担も大きいわけですが,この辺の指針が全くと言っていいほど行政の方から示されていないのです.

 もう世界中では2億人以上の人がワクチンを接種しており,すでにその効果もちらほら報告されてというのに,かたや我が国はいったいなぜこんなにも遅いのか?

 そもそも今年は,コロナに打ち勝った証として1年延期となった東京オリンピック・パラリンピックを是が非でも開催できるよう,少しでも早くワクチン接種を始める必要があることなどとっくに分かっていたはずです.

 そうであるならば,なぜもっとワクチン接種を他国並みのスピードで進められる仕組みを作れなかったのか?この時期になっても相変わらず「検討中」とか「シミュレーション中」というのを聞くにつけ,呆れるばかりです.

 現時点では国産のワクチンが完成していないため全て輸入に頼らざるを得ないということも一因でしょうが,イスラエルやチリのような国の高い接種率を見ると,原因はそれだけではなさそうです.

 日本人の得意とするところは,なにごともきちんと話し合い,種々検討を加えながら細事にまで気配りして慎重に進め,精緻で痒いところに手が届くようなものやしくみを作り上げることです.

 ですから今回のワクチン接種も,いつものように議論に議論,検討に検討を重ね,石橋を叩いて渡るがごとく慎重に進めているのであろうことは察しがつきます.

 特に今回のワクチンは人類にとってもはじめてのワクチンであり,臨床試験も十分とはいえないまま特例承認されたため,効果や副反応についても懸念が拭えないことは理解できます.

   けれども,我々人類がコロナ前の様に安心して生活出来るようになるためには,集団免疫をつけるしかないことだけは確かで,未だに特効薬がない以上,コロナ禍を乗り越えるにはとにかくワクチンをどんどん打つしか手段がないわけです.

 しかし,例によってマスコミは,副反応が出るや鬼の首取ったりと言わんばかりにマイナス面ばかりを取りあげ,低俗なワイドショーでも恐怖を煽るような無責任なコメントが溢れています.

 医療というものは,薬でも手術でも必ずマイナス面もあり,副作用ゼロの薬などないし,成功率100%の手術もありません.
飛行機に乗っても墜落することもあるし,歩道を歩いているのに交通事故に会うこともあるのと同じです.

 ワクチンも然りで,重要なことは,接種がなぜ有効でなぜ必要なのか,副反応はどのくらいの確率で起こり,どう対処すればよいのかということを丁寧に客観的に説明すること,あとはそれを個人個人が天秤にかけて冷静に判断するということです.
そこに無責任なコメンテーターの意見やセンセーショナルなマスコミの報道やいい加減なネットの書き込みは全くの不要を超えて有害でさえあります.

 そういう意味で,政府や専門家の責任は極めて重いですし,国民も偽情報に惑わされないような冷静な判断力が求められていることは確かです.

 尤も今の政府が密室政治から脱却できず情報開示という面で全く国民に信頼されていないということが大問題で,まさにこの有事のときに普段のツケが回ってきていると言わざるを得ないのかもしれません.

 ただ,諸外国のワクチン接種の状況をテレビで見ていると,言い方は悪いですが,もっと「気軽に」打っている印象を受けます.石橋を叩いて渡るのが好きな我々日本人にはそのような真似はまず無理でしょうが,しかしもう少し「ラテン系」の空気を取り入れてもバチは当たらないのではないでしょうか?

 きちんとした情報を得た上でワクチンを打つのも打たないのも個人の自由,そして最終的には自分で判断して打つ,副反応が出たらそれは仕方がないので医療の力を借りて直す,それをいちいち他人のせいにしない,それでいいのでは?

 そんなことをいうと,医療従事者としてなんということ言うんや?というお叱りを受けるかもしれません.でももう少しおおらかな気持ちを持ってもいいと思うのです.

 私個人の意見としては,とにかく1日でも早く1人でも多くの国民に接種すべく,大きな病院も含めて集団接種会場をいくつも作って,感染対策をきちんとして,副反応が起こった時の体制だけはしっかり作って,接種券を持ってきた人からどんどん接種していっていいと思います.それに対する医療従事者の供給体制も問題にはなっていますが,少なくとも私を含めて大抵の医療従事者は高い倫理観でいくらでも協力すると思います.

 コロナ禍が始まって一年余り,もう世界中の人たちがウィズコロナの生活に辟易しています.
少しでも早くアフターコロナの世界に戻りたいのであれば,そうするしかないのではないでしょうか?


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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