第64回日本糖尿病学会の感想[16] 『グルカゴンの反乱』のその後-2

健康法

『糖尿病患者は 食後に血糖値が上がっているにもかかわらず,血糖値を上げるグルカゴン分泌は逆に増加する』

と言われてきました.しかし,これはグルカゴン自体を正確に測定できていたのかという疑問が残ります.

では サンドイッチELISA法で正確に測定した場合,糖尿病患者と正常人とで グルカゴン値は違うのでしょうか?

その結果が この文献で報告されています.

健常人19人(平均年齢:49歳),2型糖尿病患者29人(同:53.3歳)が対象者です.糖尿病患者の平均HbA1cは 6.4%,BMIの平均は 27.6ですから比較的軽度の肥満型糖尿病の人が多いのでしょう.

また HOMA-IRを見ると,健常者のグループ[以下:健常群]は平均 0.84 [0.54-1.15],2型糖尿病患者のグループ[同:糖尿病群]は 平均 2.42[1.66-4.65]ですから,糖尿病群では程度の差こそあれほぼ全員インスリン抵抗性が高いようです.

両群全員に 75g糖負荷試験(=OGTT) 及び テスト食負荷試験(=MTT: Meal Tolerance Test)を,それぞれ別の日に行いました. テスト食はゼリー状の濃厚流動食です. これは通常の食事では,喫食に要する時間に個人差が出てしまうからでした.

濃厚流動食 サンエット-SA
(C) ニュートリー株式会社

糖負荷試験は 75gブドウ糖で,そしてテスト食負荷試験 は200kcalのサンエット-SAを2パックを短時間で飲んでもらっています.これはテスト食の糖質含有量が28g/1パック であるため,2パックで糖質=56 gと,糖負荷試験のブドウ糖量に近づけたのです.

それぞれの負荷試験で,血糖値・血中インスリン濃度・血中グルカゴン濃度(=サンドイッチELIZA臨床試験Kitによる URL),GLP-1,及び GIPを,30分/1時間/2時間/3時間後まで測定しています.

その結果はこうでした.左が糖負荷試験OGTT,右がテスト食負荷試験MTTの結果です.

糖負荷試験でもテスト食負荷試験でも,糖尿病群の血糖値上昇は大きいのは当然です. インスリン分泌量をみると,両試験とも むしろ糖尿病群の方が多くなっています.これは 肥満型の,したがっていわゆるインスリン抵抗性主体の糖尿病であることがうかがわれます.

注目すべきは,糖質量は,糖負荷試験が75g,テスト食負荷試験では56gなのに,健常群・糖尿病群ともにテスト食負荷試験でのインスリン分泌が多いことです.

両群 どちらも,血糖値は糖負荷試験の方が高いのに,インスリン分泌は 糖質量の少ないテスト食の方が高い

これは何を意味するのでしょうか?

[17]に続く

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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