季節により血糖値やHbA1cは変動するのでしょうか?
そう思って 先日 highbloodglucose 様のブログを眺めていたら;
医師は、「まあ、寒くなってくると、これくらい血糖値が上がることは珍しくないし」と言った
一般に寒い季節には血糖値は上がりやすいと言われているようです.
医学文献では
文献を探すと,血糖値の季節変動を報告したものはあるにはあるのですが,多くの人の平均値であり,その結論も一致しておりません.その国の気候・食文化,それに年齢や性別によっても影響されているようです.
その中でも かなり明瞭に季節変動を報告している文献がありました.
ギリシャ アテネの沖合のサラミス島(*)からの報告です.
(*)紀元前480年にアケメネス朝ペルシアとギリシャが戦ったペルシャ戦争で『サラミスの海戦』が行われたところです.
この島は四季の区別がはっきりとしており,年間の寒暖差(冬~5℃,夏~30℃;アテネ) も日本と似ています.ただし湿度に関しては日本と逆で,夏に低く 冬に高いようです.
この島の病院に通院している糖尿病患者 638人(男 294;女 344)の記録をまとめています.
空腹時血糖値,HbA1c共に 2~3月の冬に高く,8月の夏に低いという 明瞭な季節変動がみてとれます.
ただし,このデータの対象患者は 以下のような人達で;
- 平均年齢 65歳
- 糖尿病平均罹病機関 8.6年
- 平均BMI
- 54%がBMI>=30の肥満
- 35%がBMI>=25,<30の過体重
日本の基準ではほとんどの人が肥満又は高度肥満であること,また空腹時血糖値が140前後,HbA1cも7%と中程度の糖尿病です.
逆に言えば,これくらいの糖尿病だからこそ 季節変動がきれいに観測されたのではないかと思われます.
自前のデータではどうか
ところで この文献を読みながら,先日の私のこの記事に思い当たりました.
これは長期間にわたって,同一人(=しらねのぞるば)が,ほぼ同じ食事(=大豆パンの朝食)を食べた場合だけの食後血糖値をまとめたものです.
ということは,このデータを季節別に再分類したら,季節変動がみられるのかわかるのではないかと思ったのです.
その結果がこちらです.
なお,このデータは,糖質制限食が定着し,朝食メニューがほぼ一定になった2014年以降のデータのみを集計しています.
食後1時間値でみると,厳寒期(12-02月)が138±15,真夏期間(06-08月)が133±18であり,春(03-05月)と秋(09-11月)がその間にきているので,『冬に上がりやすく,夏に低い』という傾向はあるようです(ただし有意差はありません).
ところが食後2時間値でみると,夏が 107±10で高く,秋が 96±7と低くなっており,この比較のみ有意差がありました.この差は 食後どれくらい動いたかにも左右されているのではないかと思います.真夏の暑いときには,食後はあまりバタバタと動きたくないからですね.
有意差なしのわずかな差ですが,1時間後血糖値が 冬に高く,夏に低いという傾向が ここでもみられました.
ほとんどの文献で報告されている血糖値(又は HbA1c)の季節変動は,多数の人の平均値です.
このことは 全般的傾向を見るのに適切と思いがちですが,実は;
- 多数の人がそれぞれ自由に異なる食事を摂った結果である
- 一人当たりのデータはそれほど多くない(ほとんどが通院時の病院での測定なので,せいぜい 12回/人/年のデータ)
なので,バラツキが大きく なかなか有意差を見出すのは難しいようです.
これに対して 私のデータは 正反対です.
- たった一人の人間が 同じような朝食を食べた場合のデータ
- (病院測定ではなく SMBG測定だが) 測定頻度が高い(上のグラフのデータ総数は1,000点に近いです)
つまり個人差の要因がまったく入り込んでいないので,バラツキが非常に小さくなっています.実際 直近のデータの標準偏差は ほとんどSMBG自身の測定誤差にほぼ等しいほど小さくなっています.
そして なによりいいのは,これは 遠い外国のデータではなく,また欧米人のデータでもなく,正真正銘 【自分のデータ】であるということです.
反面,私のデータは そのまま他の人にあてはめることはできないということも意味します.その場合は『個人差』という交絡因子が入り込むからです.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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