おはようございます。
親の老後というのは皆共通した心配事の一つでしょう。
いくら普段は疎遠な方でも、血のつながった家族ですので全くの知らん顔はできませんよね。
我が家では、幸いにも夫婦の両親は4人とも健康です。
より正確には、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病は持っていますが、要介護状態に陥るような大病は経験していません。
とはいえ、いつ誰が要介護状態に陥るかは分かりませんので、万が一のことを考えておいて損はないと思います。
親の老後の経済的自立度を計算しておこう
日本人の平均寿命は男性で80.98歳、女性で87.14歳です。
さすがは世界一の長寿国と言われるだけはありますね。
特に、女性の87.14歳というのは特筆すべき数字です。
一方で、介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送られる期間を健康寿命と言います。
日本人の健康寿命は男性で72.14歳、女性で74.79歳です。
健康寿命は平均寿命よりも10歳前後短くなることが分かります。
この10年間とどう付き合っていくかはよく考えておく必要がありますね。
寝たきりの原因として脳血管障害・認知症・転倒骨折が多い
自分の親が要介護状態になる可能性はどのくらいあるでしょうか?
まずは、寝たきりの原因疾患を見てみます。
タバコが高齢者の寝たきりを増やす? – すぐ禁煙.jp(ファイザー) から引用
上位は「脳血管障害」、「認知症」、「骨折・転倒」です。
私は神経内科医ですので、この中の「脳血管障害」と「認知症」の診療に従事しています。
脳血管障害とは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの病気を指します。
脳血管障害と聞くと、脳の動脈硬化の進行による高齢者の病気というイメージがあるかもしれませんが、実際には異なります。
くも膜下出血の原因の大半は頭蓋内の脳動脈瘤の破裂によるものであり、30代〜40代の救急搬送もしばしば経験します。
脳梗塞も心房細動などの不整脈によって、心臓内の血栓が脳に飛んで詰まるタイプ(心原性脳塞栓症)に関しては若い方でも重篤な脳梗塞を引き起こすケースが多いです。
認知症は寝たきりの主な原因の1つと認識する
一般の方の大きな勘違いとして、「認知症」はもの忘れが主な症状であり、認知症が原因で寝たきりにはならないというものがあります。
認知症、特にその代表疾患であるアルツハイマー型認知症の初期症状はもの忘れが大部分であることは事実です。
しかし、病気の進行とともに患者さんの脳の病理学的変化は記憶力や判断力に関わる部位以外にも広がっていきます。
よって、進行期になりますとパーキンソン病に似た錐体外路症状(歩行障害、転びやすさなど)や人格変化なども出現します。
認知症患者さんが転倒・骨折を経て寝たきりになるケースは非常に多いです。
また、認知症の進行期では嚥下障害も合併しますし、食事を目の前に出されてもそれが食事と認識することができなくなり、結果として栄養失調に陥るケースもしばしば経験します。
アルツハイマー型認知症の生命予後は約10年前後と考えておけばよいでしょう。
なお、「認知症の発症を予防するために10代から意識すべき9つの危険因子」については下の記事で紹介しています。ご興味ある方はどうぞ。
高齢者は「突然」でも「ゆっくりと」でも要介護状態になりうる
以上の事実から考えますと、脳血管障害では「突然」に、認知症では「ゆっくりと」要介護状態になりうることが分かります。
また、転倒・骨折に関しても、若年者であればリハビリテーションで社会復帰が可能なケースも多いとはいえ、高齢者では手術前後の安静臥床による廃用(長期間安静にして使わなかったことによる衰え)で思ったほど回復が得られないケースも多いです。
いつ何があってもおかしくない、と考えておくべきですね。
介護保険制度は改悪が続いており、高齢者も経済的な自立が求められる
要介護状態に陥った時に真っ先に思い浮かぶのが介護保険制度だと思いますが、介護保険制度は年々改正されており、その大半が改悪という状況です。
年々増大する社会保障費が国の財政圧迫の大きな要因になっていることを考えますと、今後も大幅に改善する可能性は極めて低いと考えられます。
幸い、我が家の場合には夫婦両家の両親ともに生活基盤が安定していますので、何かあっても経済的な心配はさほどありません。
介護に関しても、お金のあるものは良い介護が受けられ、お金のないものはまともな介護が受けられない時代がやってくるかもしれません。
まとめ
健康寿命と平均寿命の間には男性で8年、女性で13年ほどのギャップがあります。
介護保険制度が年々改悪している事実を踏まえますと、高齢者になっても経済的な自立がますます重要になっていきそうです。
こんな記事も書いています。
年金の予定受取額や遺族基礎年金などの年金制度について勉強しましょう。
日本の将来について考える上で、「国土のグランドデザイン2050」は貴重な資料だと思います。
Source: 神経内科医ちゅり男のブログ
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