呼吸のように愛し合う二人。

医療機関

今日、気切チューブ交換どうします?

 

1~2ヶ月に一回、気管切開チューブの交換がある。

人工呼吸器に繋がれた生活は、ご本人もご家族も苦しい。

 

専門病院の判断は、救命という観点からは、

正しい判断で、彼らのこの時間が手に入った。

 

 

先生、もうこの人工呼吸器、止めたいの。

はっきり言って下さい。医者は無責任よ。

こんな暮らしになるなんて誰も教えてくれなかったわ。

在宅医なんだから、先生は責任持って、

この人工呼吸器を止めて。

私達夫婦は、こんなものに繋がれて、

何か悪い事したというの?教えて。

もうこんなもの無しで、二人で旅に出たいの。

お願いします。もう止めて下さい。

 

『非開始と中止』の一通りの話しと

安楽死や尊厳死の話はもちろんしたが、

彼らの苦しみの支えはまだまだ足りなくて。

そんな存在にもなれていない事を改めて実感する。

 

それをベッドで黙って聴いているご本人は、

涙を堪え、ずっと天井を凝視されている。

 

奥さんも、ひとしきりお話された後、

そっと、ひとつだけ、確認をされた。

 

先生、人工呼吸器、止めたら、

いつまで生きれますか?

1年?2年?、もしかして、それ以上?

二人で普通に老後の旅に出たいのよ、先生?

 

1,2週間かな、、、、たぶん。

 

そう、、、そう、、ね、、、そうよね、、、

お父さん、先生、このお話はもう無し。

私やっぱり、愛してるの主人のこと。

吸引でも、なんでも、夜中じゅうだって、

先に死んでしまったって、するわ。

いろいろ先生、言っちゃってごめんなさい。

 

気管切開チューブの交換の度に、

何度も繰り返される人生会議。

 

ACPや人生会議やなんだと、

軽はずみに口にするが、

当事者や当事者家族の苦しみは、

やはり生半可なものではない。

そろそろ僕らも覚悟をしたい。

 

呼吸のように愛し合う二人。

良かったら聴いてください。

 

 

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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」

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