先生、恥ずかしいわああ。顔見せられへん。
って、言いながら両手で顔を隠し、笑い泣きしてた彼女。
今日初めてお家に伺った。彼女は80歳を越え心不全終末期。
一人暮らしの彼女は、昨日から、どんな先生が来るか心配で、
訪問看護師さんと一緒に僕の顔をYOUTUBEで確認してたそうだ。
お家に入ると、まず目に飛び込んできたのは、大きな箪笥。
そして、その前にかかる作業服。隣の部屋には若い女性の遺影。
両手で顔を隠す彼女に、早速、箪笥と作業服のお話しをお訊きした。
この作業服は、どなたのでしょう?あ、息子さんの。
お母さんはいつから一人?どんなお父さんだったんですか?
お父さんの最後の日の別れの物語を、今度は、
両手で顔を覆ったまま、鼻水を垂らしながら、
涙声で、ご主人は突然死だったお話をしてくれた。
大きな箪笥には、今もご主人の洋服が入っているそうで、
その前にかかる作業服は、良くしてくれる息子さんので、
どんどんお父さんに似てきて、とても嬉しいって話。
そこからは、ご主人似でとっても穏やかな長男さんの話。
長男さんの妹でご本人にとっては娘さん、若くで癌になり亡くなられたそうだ。
時の流れに身をまかせ今日まで生き抜いてきた彼女の大切な物語を教えて頂いた。
ワンちゃんしんのすけって言うのやけど、
この子の事だけが後は心配で私死ねないの。
この子の行き先が決まればもうね、葬儀会館も、
死亡保険も、お墓の事も全部ちゃんとしてあるの。
だからあとは、先生、お願いね。私ここに居たいの。
心不全終末期。お一人暮らし。時に、入院治療もしっかり頼り、
治療の止め時をしっかり見極め、人生の最終段階を大切にしたい。
私、時の流れに身をまかせてきたの。
だからこそ、物語が詰まったここに、
最期の時まで居させて欲しいの。
って、聞こえた気がした。
良かったら聴いてください。
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