「後悔はしたくない」――
それは乳がんになってから
ずっと心に抱いていた想い
一度きりの人生
後悔は勿体ない気がしていた
が、実はたったひとつ、後悔がある
それは、
「ありがとう」と言っていないこと
私の乳がん発覚は複雑なものだった
自分でしこりをみつけたものの、
簡単に“良性”と診断され
5年近くもの間、放置された
さらに5年後にわかった乳がんは
乳がんにしては稀ながん細胞
主治医はかなり調べてくれたようだったが、
学会に出してもいいくらい珍しいもの
ほかに症例は
みつからなかったようだった
外科部長にも
私の症状を相談してくれていた
しかもこの病院に来る前に、
ほかの医療機関で外科的生検を受けていた
おっぱいやわきの下のリンパ節が腫れ、
がんの広がりがわからないという．．．
珍しいがん細胞のため、
ほかの臓器からの転移の可能性も考え、
徹底的に検査もしてくれた
1か月待ちの肝臓の超音波検査では、
「急ぎの患者がいる」と
直接、放射線科に掛けあってくれた
手術前日には、
全摘か温存かで
主治医を夜遅くまで悩ませ．．．
術後、外科部長が、
「りかこさんの先生、
夜遅くまで悩んでたよ」と
教えてくれたのだ
ホルモン治療では
副作用が強すぎたあまり、
治療を「やめる」「やめない」で
何度も主治医と話をし．．．
とっても手のかかる患者だったと思う
なのに私は主治医に
一度も感謝の気持ちを伝えていない
主治医とは
けっこうぶつかりあっていたから
たぶん、年齢が近かったことも大きい
あとでわかったことだが、
私より若かった
あんなに悩ませ、
こんなに苦労をかけ、
とっても親身になってくれたのに
なのに私は主治医に一度も
「ありがとう」と言えないまま、
主治医は突然いなくなってしまった
後悔してもしきれない
あれだけ副作用で苦しんでいた私が、
今、これだけ元気になった
きっとそれだけでも
医師や看護師さんは
嬉しいのかもしれない
『感謝の気持ちはすぐに伝えるべし』――
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Source: りかこの乳がん体験記
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