「ちょっと助けてもらえないか」――
そんな知らせが来たのは、
私が札幌からこの街に出戻ってきてから
まもなくのこと
「お店を立て直してほしい」
というものだった
聞けば、その“お店”というのは、
コーヒーや軽食を提供している、
当時で言うところの“喫茶店”
経営しているのは、
外食産業とは全く畑違いの
金融関係の会社
「前の店長が辞めてしまって、
今は17歳の女の子2人に
やってもらっているのだけど
売り上げがどんどん下がって
困っている」
というのだ
この街に帰ってきたばかりの私
これから仕事も
探さなければならなかった
しかも今回の話は、
私が携わってきた外食の分野
昔、
「自分の店を持ちたい」と思った夢が、
“雇われママ”という形ではあるが
少しだけ叶うかもしれない...
断る理由はどこにもない
「やります!」
即決即断だった
店内に案内されると、
掃除も行き届いていない
17歳じゃ、
掃除もまともにできなくて
当たり前だろう
メニューも見せてもらった
『これは変えなきゃ駄目だな...』
売り上げと仕入れのグラフも
見せてもらったが
仕入れは増えているのに
売り上げはどんどん下がっている
会社の人が言うには、
「高校の友だちが来て、
みんなにパフェや飲み物を
無料で出しているのではないか」
とのことだった
実際、その17歳の2人と、
2日ほど一緒にそのお店で働いたが、
確かに学校終わりの友だちが
たくさんやってきた
私がいたため、17歳の彼女は
友だちになにも提供はしなかったが、
高校生たちも
なにも注文はしなかった
『席だけ陣取って、
これじゃあ、ほかのお客さんも
入って来られないわ...』
そして私が新たに
店長として働くことになり、
2人は翌日から来なくなった
会社は、
「すべて任せる」とのことで、
メニューも一新
それに合わせて
食器も一部購入してもらった
インスタントものが多かった食べ物も
できるだけ手作りに変えた
なぜかお店に
インスタントコーヒーがあった
そう、お湯で溶く、あれ
コーヒー豆を使わずに
まさかお客さんに
インスタントを提供していた...?
トーストに使用するパンも、
パン屋さんに依頼した
トーストの食パンは、
スーパーで売っているものを
使っていたようだ
(商品名は上げられないが、
ヤマ○キの...)
実はこのとき、メニューの中に
“ホットケーキ”があった
ホットケーキは、
以前働いていたファミレスにあった
が、そもそも
そんなに出るものではない
それにホットケーキを置くことで、
それ用のバターやメイプルシロップなど
在庫も増える
なのでこのとき私は、
メニューから外すことを決めた
ある日、
ファッションモデルであり
俳優でもあるりょうさん似の
きれいななお母さんが、
4歳くらいの男の子と一緒に
来店してきたことがある
まだメニューを変える前のことだった
メニューを見ながら、
「ホットケーキください」
と、ホットケーキを注文
おそらく、
子どもと食べるためだろう
それから1か月くらい経っていただろうか
再び親子がやってきた
「ホットケーキください」
と、メニューも見ずにお母さん
が、実はこのとき、
すでにメニューから
ホットケーキを外していた
従業員は、
「え? 佐藤さん、
ホットケーキ(メニューに)ないですよ」
と驚いたが、
「いいの、いいの。あのお母さん、
いつもホットケーキ頼むの」
私はそう言って、
まだあった在庫から作って提供した
それから2か月ほど経った頃、
あのお母さんと男の子が来店
私の頭の中で、
『マズい...、
もうホットケーキないんだよな』
と、焦る
「ホットケーキください」
『やっぱりホットケーキ頼むよね...』
もう在庫もない
メニューに載せていないのだから
もちろん発注もしていない
「すみません。
ホットケーキやめちゃったんです」
「え...。
(子どもの名前を呼んで)ホットケーキ、
やめちゃったんだって。
どうする? なににする?」
と、お母さんがメニューを開く――
心が痛んだ
きっと、
たまにここで食べるホットケーキを
楽しみにしていたんだ...
「メニューには載せていないですけど、
ホットケーキ、用意しておきますね」
と、あのときなぜ言えなかったのか...
いや、言えば、
「このお店に来なきゃ」
と、変なプレッシャーを
与えてしまいそうな気もした――
あれから何年経っただろう...
20年...いや、30年...
まだ私は20代だった
が、
未だにあのときのことを思い出す
たぶん、人生で最大の後悔だ
★2つのランキングサイトに登録しています
1日1回、応援のクリック(タップ)を
していただけると嬉しいです
人気ブログランキング にほんブログ村
⇩ ⇩
両方押していただけるともっと嬉しいです
日々の励みになります
★しこり発見から治療までの経緯は⇒こちら
★さらに詳しい経緯を更新中⇒≪私の記録≫から
Source: りかこの乳がん体験記


コメント