医療はポイ活?

内科医

 コンビニやショップのレジ,スマホを取りして〇〇ペイのアプリを立ち上げてバーコードを見せる.
店員から,「××ポイントアプリありますか?」
 そうだった❗️と気づき,〇〇ペイのアプリを閉じてそのポイントのアプリを立ち上げて見せてピッとやってもらってポイントゲット.そして,改めて〇〇ペイのアプリを立ち上げ直しバーコードを見せてピッとしてもらうのですが,なぜか反応しない.おかしいと思ったら,なんと金額不足.
 そこでやむなくその場で慌ててチャージするか,今度は別の△△ペイのアプリを立ち上げてようやく支払い完了.

 今やこんな日常が当たり前になりました.
 つい先日旅行してきた北欧にはまだまだ及ばないものの日本もどんどんキャッシュレス化が進んで,クレジットカード,あるいはキャッシュレス決済アプリが何種類も乱立,さらにはポイントもやたらと乱立して,まさにペイポイ地獄状態です.
 それでも世の中にはどんな分野でもその道に長けた人がいるもので,とにかくあらゆる場面を利用してポイントをためるポイ活なるものも流行っているようで,涙ぐましいほどの努力に脱帽してしまいます.

 さて,今年度は恒例の2年に一度の診療報酬改定の年で,今月から新しい診療点数が適用されています.

 失われた30年から抜け出し経済にもようやく明るい兆しが見られ出した我が国,まさに深淵からの脱却過程でやむを得ないとも思いますが,物価も人件費など,あらゆるコストが上昇傾向にあります.

 しかし,価格を自由設定できる民間企業とは異なり,保険医療においてはあらゆる医療行為や薬剤の報酬が診療点数という公定価格により厳密に決められているため,自由診療でなければ,物価高騰分を独自に上乗せするようなことは法的にできませんし,消費税を上乗せすることも禁じられているのです.

 容赦のない物価高騰や人件費の上昇は昨今の医療機関の経営状況を悪化の一途に追いやっており,全国の大規模病院はどこも大赤字で,以前はありえなかった小規模医療機関の倒産事例も珍しくなくなっています.もちろん兵庫県も例外ではなく,なんとか経営改善をすべく統廃合が進められたり,赤字を公費で補填したりしていますが,抜本的な解決には至っていません.

 そこで今年の診療報酬改定では,この物価高騰に対処すべく,加算が色々と新設されています.加算というのは,診察や検査などの基本点数に追加される「おまけ」のようなものです.

 今回始まった「物価対策加算」,この露骨とも言える名前の加算では,その名の通り診療1回につき2点,つまり20円,3割負担なら自己負担6円アップとのこと.でもこの額を見て「セコい」と感じるのは私だけでしょうか?
 前回の診療報酬改定で新設されたベースアップ加算,これまた露骨な響きですが,もともとは看護師の賃金アップのみに当てられたものでしたが,これを事務職含め全員に拡大し,その額もアップされました.

 その他にも,地域包括加算,機能強化加算,時間外対応加算,外来感染対策加算,発熱対応加算,電子的診療情報連携体制加算等々,ここ10年くらいの間に次々と加算が増えています.
 明細書を見た患者さんたちも「何やこりゃ?」とびっくりするかもしれません.

 私が開業した頃にはこのような加算はほとんどなく,もっとシンプルだったのですが,次々と増えていまや加算の嵐になっています.それでも少しでも収入を増やして経営を安定させるためにはやむを得ません.

 ただこれらの加算も無条件に算定できるわけではなく,研修会に出ているか,往診や訪問診療を行っているか,診療時間外も電話などで対応しているか,マイナンバーカードでの受付をしているか,校医や介護保険委員などとして地域医療に貢献しているか,連絡先をわかりやすく院内掲示しているか,感染対策をしながら発熱患者をできる限り受け入れているか,などなど各加算ごとに種々の基準を満たしていることが前提で,それぞれ厚生局に特定の書式で定期的に届け出なければなりません.
 しかもベースアップ加算に至っては,どれぐらい賃金をアップしたかまでいちいち詳細に報告しなければならないのです.

 要するに行政のトップは,私たち下々の者たちに,いろいろ頑張ってくれればその分は加算という名目でご褒美をあげますよ,ただそれを院長がポッポナイナイしないでちゃんとスタッフの待遇改善に使っているかはきちんと報告してくださいね,という監視付きなのです.
 しかも診療報酬関係の通達文面は,法令なのでやむを得ないにしても,嫌がらせではないかと思うほど複雑怪奇なのは相変わらずで,届出も面倒極まりなく,事務作業ばかりが増える一方です.

 消費税が取れない,そして物価が上昇しているのであれば,ややこしい何とか加算などやめて,単純に初診料,再診療を一定額例外なくアップしてくれさえすれば済むことなのではないか?私を含め多くの医療従事者がそう感じていると思います.
 少子高齢化で逼迫する医療財源を少しでも節約する必要があること,そのために正しく使ってほしいということでこのような複雑な仕組みになっているのでしょうが,なんともモヤモヤした気分ばかりが残ります.

 開業医になると医師の本業である肝心の医学そのものをじっくり勉強する時間がなかなか取れなくなるというのはずっと体感していましたが,最近はそれに拍車がかかっていると言わざるをえません.

 先日医師会の先生方との会合で,親しくしている若手のY先生が面白いことを言っていました.

 「我々の仕事って,何かに似てませんか?そう,ポイ活ですよね🤤」と.

 まさに座布団5枚.診療報酬の世界は,まさに「ポイ活」ならぬ「加算活」だったようです(笑)


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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