勤務医が医師専門の不動産投資セミナーに参加した時の記録

どうもこんにちわ。かいおです。

医者にとって不動産投資は最適な投資方法だとされていますね。本当かどうか分かりませんが…

不動産投資はちょいとハードルが高く、一歩が踏み出せなかったのですが思い切ってセミナーに参加してみることにしました。

その時のセミナーの内容などをご紹介しましょう。

なお体験談は個人の経験・考えを反映していますので、一般化して考えられるものではありません。その辺りはご了承ください。

医師専門不動産投資会社とは

世の中には、医師や弁護士などの高所得者を専門とした不動産投資会社がたくさんあります。

医師や弁護士などの高所得者は一般サラリーマンと違って高額なローンを組みやすく、かつ節税効果も高いのがメリットです。

私もそんな医師専門の不動産投資会社の一つを選んでセミナーに参加してみることにしました。

セミナーの実際(1回目)

セミナーとなると、何十人も会議室に集まって胡散臭い話を聞くようなイメージだったのですが、そうではありませんでした。

セミナー開始時間の5分くらい前に到着してみると、会場は都心部のビルの一室でした。

会場にはすべに先客がおられ、40代くらいの男性が座っておられました。

セミナー資料を一生懸命眺めているところを見ると、どうやら会社の人間ではなくお客さんのようです。

仮にこの客を、客Aとしておきましょう。

お顔に見覚えはありませんが、これは医師専門のセミナーですから、状況的には医者ですね。

大人数いればスマホをいじっていても問題ないのですが、同じ空間に2人しかいませんから思い切って話しかけてみることにしました。

私「セミナーに参加されるんですか??

客A「ええ・・・(こいつも医者か?)

会話は盛り上がりません。

同業者でこれから2人とも普段病院の中ではあまりしない金の話を聞くわけですから、深い仲になれるわけもありません。

「どこの病院ですか?」なんて聞いてもよかったのですが、逆に話が広がりそうで質問できませんでした。

営業マンが到着

さて、気まずい時間が流れゆく会議室なかで、5分ほどすると今度はハツラツとした、いかにも体育会系の30代の男性が部屋にこられました。

いよいよ営業マンの登場です。仮にこの営業マンの名前を営業マンBとしておきましょう。

営業マンBの自己紹介のあと、私と客Aへの質問が始まります。

どこの病院に勤務しているのかとか、なぜ投資をやろうと思ったか、不動産投資についての知識などの質問が発せられます。

営業マンBは「あ〜◯◯病院にお勤めなんですね、そこの先生も投資されていますよ」なんてことを話していました。

ホントかウソか分かりませんが、人間は身近な人がやっていることを聞くと、ついつい自分もやりたくなってしまう生き物です。

このセリフ、結構効果的だなぁと思ったものでした。

客Aは私とは違う大学の出身の呼吸器内科医で、働いている病院もバリバリの関連病院のようでした。

そろそろ転職を考えているらしく、良い機会だと思って投資についても聞きにきたとのこと。やっぱり医者でも不動産投資について考えている人は多いんですね。

セミナーの内容

基本的にはパワポのスライドを見ながら話が進んでいきます。

客2人と営業マンAだけの3人の空間ですから、セミナーというよりは個別相談会みたいなイメージでしょうか。

不動産投資の基礎知識から会社の紹介、実際に投資を行なっている医師の細かいデータまで見せてもらいました。

この不動産会社は、物件の設計、建築、販売から賃貸管理までを一括して行う事業を展開しているようです。

したがって投資する客としては、この会社から不動産を購入し、管理などもおまかせすることになります。

基本的には不動産投資そのものでリターンを得るというよりは、不動産投資を行うことで経費を計上し、節税することによってトータルで+にしよう、そんな話です。

この辺りの説明は、残念ながら病院に電話のかかってくる悪徳不動産投資会社の手口と一緒です。

しかしスライドで提示される実例を見ていると、実にリーズナブルで説得力があります。

例えば年収2000万円の眼科医が新築ワンルームを5室購入し、初年度は300万円以上節税できた!みたいなストーリがあるんです。

医者は良くも悪くも物事を冷静に論理的に考えますから、絶対に儲かると言われる疑ってしまうものです。

しかし+300万円の数字が現実的で間違っていないがゆえ、本当にこの不動産投資は良いものであると考えてしまいがちなのです。

やはり電話口で「先生にオススメの節税方法があります!」と言われるより、パワポでプレゼンされる方が幾分説得力はあります。

ただしその後に示された個別の収支を見ると、すんなりと納得できない部分がいくつかありました。

セミナーでの疑問点

毎月の収支が赤字

4人ほど実例をスライドで見せて頂いたのですが、驚いたことに不動産事業における全員の収支が毎月赤字なのです。

新築ワンルームをローンを組んで購入し、家賃収入からローンの支払い、不動産会社への手数料などを差し引くと、毎月数万円の赤字になる設定なのです。

一緒にいた客Aがすかさず質問します

赤字なんですけど、大丈夫でしょうか?

(ん、もっともな質問だ)そう思って聞いておりました。営業マンの回答は

医師は不動産事業で収支をあげるよりは、税金の支払いの部分が多いので、節税から得られるメリットの方が多い、したがって少々の赤字を補うだけの節税メリットがある

とのことでした。

この回答もなかなか正面から反論するのは難しいのが正直なところです(ここまで利回りなどの説明はありません)

単純に考えれば、毎年の不動産事業の収支が眺望上100万円の赤字になったとしても、経費などをせっせと計上して節税効果が300万円分あるとするならば、何もしないよりも毎年+200万円となります。

…やっぱり…良さそうですね。

もちろん初年度は諸経費から得られる節税のメリットが大きいわけですが、それでも2年目以降もトータルすると+になりそうな話ぶりです。

妙に納得してしまうのです。(ただしこのふとした疑問は、2回目の面談ではっきりと確信になるわけですが)

出口戦略が不透明

もう一つの疑問は出口戦略です。当たり前のことですが、不動産投資には売却するまでの戦略が重要です。

節税で得られる所得が+100万円であったとしても、不動産売却に伴う損失が100万円以上ならトータルで損することになります。

示されたシュミレーションの毎月の収支が赤字であるがゆえ、不動産の売却についても質問してみました。

営業マンBの回答は

10年前に購入されたお客さんは、購入時よりも+1000万円で売却していますので、大丈夫です」とのこと。

まあつまりこの不動産会社の販売する物件が優良物件であるとの自信の現れなのでしょう。

ただ10年前といえばちょうどリーマンショックで不動産価格が底値の時期です。

一方2018-19年は景気の上向きに加えてオリンピックの建設ラッシュで、首都圏を中心に日本全国で不動産価格はバブル後最高値ともいわれています。

首都圏の不動産価格は、10年前と比べて良いも悪いもどの物件もほとんど横ばいか値上がりしている状況ですから、このあたりの価格変動を「物件が良いから」と決めつけるのはちょっと危険ですね。

この辺りは私も2年前に熟慮してマンションを購入していますから、心得ておりました。

投資を任せる会社としては、ちょっと説得力ないなぁ、と思っていたものです。

試算表を作ってもらうことに

1時間ほどのセミナーを終えて、ひとまず試算表を作ってもらうことにしました。

私は早々にセミナー会場を後にしたのですが、客Aはその後も営業マンBと話し込んでいる感じでした。かなり惹きつけられていたのでしょうか。

その後、営業マンBと何度か連絡を取り合った後、おおよそ1週間後に2回目のセミナーに挑みます。

セミナーの実際(2回目)

せっかくアポをとったので、せめて投資のシュミレーションだけでもしてもらおうとおもって2回目の面談に挑みました。

場所は同じ都心部のビルの一室ですが、どうやら営業も本気なのか1 vs 1のタイマンでした。

たわいもない会話の後に、示された試算表をみて驚きました。

利回り4%!!

この段階になって初めて自分の購入する物件を知ることになるのです。

購入する物件として示されたのは、首都圏ターミナル駅徒歩10分以内の新築ワンルーム、一部屋おおよそ3000万円です。

節税効果を得るために購入費用はほぼフルローンで金利は確か1-2%程度、そして新築物件の利回りはなんと4%です。(年間の家賃収入120万円)

試算表には利回りの記載はありませんでしたが、想定家賃や管理費などの項目を見る限りはどうやら4%みたいです。

この利回り4%はもちろん初年だけであって、築年数を経るごとに想定家賃は下落していきます。

私も不動産投資に明るい方ではないですが、利回り4%の物件をフルローン購入、という試算を示された時点で、いろんなことが頭に浮かび、その後のトークはほとんど頭に入ってきませんでした。

利回り4%の記載が試算表にはなかったので(ああ、これは質問してはいけないんだな)と思いつつ、話を聞いておりました。

2回目のセミナーの開始10分くらいで、(あ、ないな)と思ったのでした。

見えてきた構図

結局のところこの手の不動産投資で一番利益を得るのは、不動産投資会社なのでしょう。

購入する医師や弁護士としては、高い節税効果によって投資をした方がメリットを得られる可能性はあります。

ですから、運が良ければ投資会社と出資者でwin-winになれる可能性も残されています。

例えば営業マンBが例に挙げてきた、購入不動産の売却で1000万円以上の利益を得た医師は利益を得ていることでしょう。

ただし節税効果が仮に10年でトータル1000万円として、売却価格が購入時よりも1000万円下がったとすると、この不動産投資は全く意味のないものになります。

もし売却価格が1000万円以上下がったとすると、この不動産投資で明確に損することになります。

私に示された試算では、3000万円の物件を2部屋購入という試算でした。

新築プレミアが20%とすると、購入して賃貸人が住み始めた時点で、物件の価値はすでに2400万x2で4800万、すでに1200万円損することになります。

しかも元々の物件価格もおそらく割高であるため、家賃収入による収益も見込めません、というか上にも書いた通り赤字です。

冷静に考えると、購入時点ですでに1000万円以上の赤字を背負うことになりそうです。

この投資によって儲かるのは、相場よりも高い物件を売りつけ、管理業務や手数料収入で利益を得る不動産投資会社になるのでは、と思ったのです。

本当にこんなの買う医師がいるの?

実は私は1回目のセミナーの前から少しずつ不動産投資の本を読み始め、2回目のセミナーに到るまでには不動産投資を肯定・否定する書籍を10冊ほど読みました。

ですから2回目の面談の際に営業マンと話した感覚として、はっきり「この投資は自分ではなく不動産投資会社のものである」と確信しました。

毎年の収支は節税効果で多少プラスになるかもしれませんが、不動産投資事業としては大赤字です。そしてその赤字は不動産投資会社の収益になります。

さらに出口戦略でつまずくと節税で得られたゲインもすべて吹っ飛んで、最終的な損益はマイナスになってしまうリスクを伴います。

ちなみにこの不動産投資は高収入に対する節税が大前提の投資ですから、もちろん仕事をアーリーリタイヤすることなんてできません。

不動産投資のメリット

とまぁここまで否定的なことも書きましたが、不動産投資自体はたくさんのメリットがあります。

例えばローンを組んで物件を購入する場合には、団体信用生命保険に加入することになります。

ローンを組んでいる人間が死亡したり高度な障害を負った場合には、ローンの支払いが免除され家賃収入だけが残りますから、生命保険の代わりにはなります。

それにもし日本が大幅なインフレに傾いた場合、キャッシュで資産を持っておくよりは、住宅ローンを組んで現物資産を購入していた方が安全です。

このようなことは不動産投資本にたくさん書いてありますので、ぜひ一度は読んでおきたいものです。

まとめ

頑張って参加した不動産投資セミナーだったのですが、残念ながら不動産投資で大儲け、の夢は潰れてしまいました。

これから不動産投資を考えておられる先生は、よく勉強されてから投資されることをぜひオススメいたします。

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Source: 医者夫婦が語る日々のこと、医療のこと

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