遺伝とは
メンデルの法則によって,親から子に形質を伝える遺伝子というものが存在しているらしいことは古くからわかっていました. ただし そのメカニズムは不明でした.
一人一人の遺伝子を詳細に解析できるようになったのはつい最近のことであり,それまでの時代はひたすら『系図』から血縁者の病気などの有無を詳細に調べて,
- どの遺伝子がどのように継承されていくのか
- その遺伝子は『顕性』なのか『潜性』なのか[★]
を推測していくことが『遺伝学』の唯一の研究手段でした.
[★]以前は『優勢』/『劣勢』遺伝子と呼ばれていましたが,人の優劣を表すと誤解されやすいので,英語のDominant/Recessiveを適切に訳した[顕性]/[潜性]と呼ぶことになりました.
DNA
しかし,WatsonとCrickが,1953年にDNAの二重螺旋構造を解明し,正確に遺伝情報が複製される仕組みが明らかになりました.
DNA,つまりデオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid)は 4種の塩基;
- Adenine アデニン
- Guanine グアニン
- Cytosine シトシン
- Thymine チミン
が 必ず A-T,C-Gという対をなして,その配列により遺伝情報を記憶し,かつ 複製していくことが明らかになりました.
したがって 個人のDNAを隅々まで調べれば,いろいろな形質(身長・肌の色等)や特定の病気のかかりやすさも解明可能と分かりました. 原理的には.
ところが,人間の遺伝子の情報は膨大で A-T,C-Gからなる塩基対は30億対もあります.そしてそのどこに何個の遺伝情報(ゲノム)が書かれているのかはまったく不明でした
最新情報ではゲノムの数は 21,306個 とされていますが,それで確定したわけではなく,まだ論争が続いています.
ヒトゲノム全解析
ところが,これをコンピュータを使って解読する技術開発が進み,2003年には ヒトゲノムの全ての配列が明らかになりました. ただし 当時の技術では これに 15年かかりました.
しかし 今や 次世代DNAシーケンサー(Sequencer)も登場し,
特定個人のDNAを まるまる全解析する時間・コストは大幅に低下しています.
かつては一人の人間のDNAを全解析するのに$10億=1,000億円もかかりましたが,現在では, $1,000,つまり10万円くらいでできる時代になりました.
[3]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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