出かけるときの下着事情。

「もし、突然死んで
 誰かが家の中に入ることになたら、
 家の中汚いから、片付けとかなきゃな...」

笑いながらそんな話をしていたのは、
看護師さん

確かにひとは、
いつ、なにがあるかわからない

突然倒れることもあれば、
事故に遭う可能性もなくはない

それは、“下着”もそうかもしれない

たとえば外出中、
体調が悪くなって倒れたとき

たとえば、事故に遭ったとき――

救急搬送され、服を脱がされ...

そんなことを考えると、
くたびれた下着は控えたい

...と、思うのだ

  病院の方では気にしなくても、
  こちらとしては気になるもの

  それは、ヒトとして、女性として

そんなことを考えていたら、
入院中のことを思い出した

「乳がんの手術のあと
 化学療法をすることになれば、
 入院はどれくらいになるかわかりません」

そう言われていた

『少なくとも
 3週間は入院になるかもしれない』

と、とりあえず、
2週間分の下着(おパンツ)を準備した

“2週間分”の理由は、
入院中、外出許可が下りると踏んでのこと

そのときは家に取りに帰ればいい

その2週間分のおパンツの内訳は、

  ○新品か新品に近いもの3枚程度
  ○そのほかは洗濯をしなくて済むように、
   捨てようと思いながら捨てられなかったもの

用途は、

  ○新しいものは、
   手術直後の動けないとき用
   (看護師さんに見られる可能性があるため)

  ○古びたものは、
   手術から数日経って、
   自分でなんでもできるようになったとき用
   (誰にも見られないこと前提)

術後2目だっただろうか

「この下着、りかこさんの?」

と、透明なビニール袋に入れられ
きれいに畳まれたおパンツを
看護師さんに手渡されたことがある

『確か、おパンツを紛失した記憶はないな...』

そう思いながら袋を受け取ると、
やはり見覚えがない

どうやら手術前に脱がされたものが、
患者の元から離れてしまったらしい

  私がお世話になった病院は、
  下着を着けたまま麻酔をされる

  その後、下着をはずされる(と思う)ので、
  恥ずかしい思いをしなかった

こうして
多くの患者の目に晒されることになったその下着は、
レースがあしらわれた白いおパンツ

もちろん、きれいなものだった

「こんなこともあるのなら、
 手術にはきれいなおパンツで挑むべきだ」

と、強く思ったのである――

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Source: りかこの乳がん体験記

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