告発者は退職せざるを得なくなったTBSは、自らが引き起こした「報道被害」に対する訴えを、なんとかして「隠蔽」したかったようだ。
TBSが1月12日放送の『news23』で追及したJA職員による共済の自爆営業。同番組は、その時点で現役のJA職員だったA氏の証言をもとに、JAの過大なノルマやその結果生じる「自爆営業」について報じた。ところが、同番組で使用されたインタビュー映像の加工が杜撰だったことから、告発者のA氏は職場で身元が判明して、退職を余儀なくされたという。
そこで筆者は『週刊現代』(5月1日発売号)と現代ビジネスで、A氏の訴えをもとに、TBS『news23』による「報道被害」の問題点を伝えた。
その記事が掲載される『週刊現代』の発売前、番組の取材を担当した報道局調査報道ユニットの記者がA氏に電話をかけ、記事掲載を見送らせるよう、こうそそのかしてきたという。
「『記事になるとさらに『身バレ』するので、いますぐ週刊現代に電話して、掲載の差し止めを要求したほうがいいですよ。週刊現代編集部の連絡先を教えましょうか』と言ってきたんです」(A氏)
TBS記者の「取材妨害」A氏が電話に出るまでの約1時間に、記者は何度か音声通話の着信を残している。A氏が電話に出てみると、電話口には記者がもう一人いて、二人が何度も代わりながら説得してきた。
「とにかく慌てた様子でしたね」(A氏)
TBSの記者は、冒頭の記事を出す前に筆者がA氏に送ったコメント確認用の原稿を持っているかどうかも聞いてきた。
「(週刊現代の)原稿を見たい様子でした」(A氏)
さらには筆者との連絡を絶つことも迫ったという。
「『記事のことで、窪田さんとはもう連絡を取らないほうがいい』と言うんです。この言葉を聞いたとき、さすがに『えっ、なんで』って思いました。その理由がないですからね。やはり(A氏が退職を余儀なくされた)報道被害の実態を隠蔽したいんだなと直感しました」(A氏)A氏は記者二人から約20分にわたって「説得」されたものの、それには一切応じなかった。
余談ながら、筆者は拙著『農協の闇』を読んだというTBS記者(A氏に電話した人物)からの依頼で、『news23』の当該番組づくりに当初から協力してきた。TBSからは感謝されこそすれ、取材や原稿の執筆を妨害されるいわれはないはずだ。
TBSの言い分本題に戻す。筆者はA氏が訴える「報道被害」を報じる記事を執筆するにあたり、TBSの広報部に質問状を送っていた。
その直後、調査報道ユニットと思しき電話番号から着信が二度あった。いずれの電話にもあえて出なかったが、記事の差し止めに関する用事だったと推察する。私が応対しなかったので、記者はA氏の「説得」に向かったと思われる。
一連の出来事について、TBSテレビ社長室広報部に再び質問状を送ったところ、
〈週刊現代等の記事にあるような「TBSに裏切られた」など当社を非難する趣旨の連絡を取材対象者から受けたことはなく、質問には取材源の秘匿の観点からお答えできません〉
と書面で回答した。
A氏が改めてこう話す。
「映像の加工に問題があったことは記者にきちんと伝えました。放送後にYouTubeで当該番組が見られるようになっていたので、それを削除する依頼もしています。実際に動画が削除されたので、TBS側には後ろめたい気持ちがあったのではないでしょうか」
自分たちの不手際でJAの職員を退職に追い込んだだけでなく、その隠蔽に当人を加担させようとするなど、あってはならない行為ではないだろうか。
窪田 新之助(農業ジャーナリスト)
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Source: 身体軸ラボ シーズン2
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