「もう、以前のように
動き回ることはできないんだな．．．」
．．．と、ふと、思った
周囲を見回しても、
みんな元気に歩き回っている
犬の散歩をしているひと．．．
ジョギングをしているひと．．．
テレビを点ければ、世界陸上
そして、バレーボールや
野球をやっている選手たちの
いきいきとした姿が目に映る
それはまるで別世界のようだ
「私はもう何もできないのか．．．」
歩いても
普通の人の半分のスピード
いや、3分の1かもしれない
急ごうとしても、小走りもできない
周囲との差をまざまざと感じる
それは、なんとなく、
乳がんがわかったときに味わった、
感情に似ている
たった一人取り残されたような、
あの感情だ
みんなは元気でいいな
笑顔でいいな
私はもうすぐ死ぬかもしれない
私には、
そんなふうに元気にもなれないし
笑うこともできない――
そんなことを感じた、がん告知後
まぁ、
足は上手く動かせないだけで、
ちょっと痛みがあるだけで
身体も心も元気だけどね
股関節の病気はがんのように、
命にかかわる病気でもない
ただ．．．
歩くと見た目にわかるだけに、
ちょっと嫌かな
「あの人、歩き方変だね」
そう思われるのかな．．．と
もし、事故や災害が起きて、
「早く逃げてくださーい！！」
と呼びかけられても、
私は逃げられない
まぁ、元気だから、それでいいのだけど
元気で生きていられる――
それだけでしあわせなこと
バス発車の時刻ギリギリには
駆け込めない
横断歩道の信号の点滅は、
次の青信号まで待つ
私の横断を待ってくれる車には
本当に申し訳なく思う
他人に迷惑をかける生き方は嫌だ
が、今、私、迷惑ばかり
かけているのかもしれないな．．．
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Source: りかこの乳がん体験記
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