「そのネックレス、
さぞかしお高いんでしょう?」
と、一見してわかるほど、
首元に濃厚な乳白色の光を抱いた、
パールのネックレスをしたご婦人が
いらっしゃった
2連の、しかもロングの
高級そうな代物だ
が、そこは母の通夜会場
通夜・葬儀に“2連のネックレス”、
そして“ロングのネックレス”は
完全にマナー違反
お祝い事は、
「嬉しいことが重なる」として
2連でも問題はない
が、喪の席では、
「不幸が重なる」として
忌み嫌われている
ロングのネックレスも
「哀しみが長引く」として
喪の席では相応しくないとされている
これくらいは、
当時の私でも知っていたマナー
そのネックレスを着けていたのは
60代と思しきご婦人だったが、
きっと通夜・葬儀があるたび、
これを着けて参列しているのだろう
私の母の通夜だっただけに、
「すみません。そのネックレス――」
と、
はずすようお願いをしようと思った
...が、できるはずもなく...
誰かがそのご婦人に、
注意をしてくれるわけもなく...
母の通夜に、
総レースの“衣装”を着用してきた人もいた
身頃やスカートに裏地は付いているものの、
全身スケスケレースだ
しかもふわふわとした、
ダンスでもしそうなもの
もちろん、
手にしているバッグも派手やかだ
お参りしてくれるのは
本当にありがたいと思う
...が...
「その“衣装”...」
と、
一瞬、目が点になってしまった
喪服は地味で、
どれも似たようなデザイン
だから、
「お洒落で、
少しでも違う雰囲気のものを...」と
思う気持ちもわからなくもない
喪の服装をはじめ、バッグや靴など
「黒けりゃいい」と、
思っているひとが少なくない
もちろん“黒”であることは
第一条件ではあるのだが...
が、通夜・葬儀は
お洒落感を求める場ではないような気がする
実は私の妹もかなり失礼な格好をして
いとこの通夜・葬儀に参列したことがある
もともと妹は喪服を持ってはいたものの、
実家から離れ、
ひとり暮らしをしているときだった
会場で妹の姿を見て驚いた
なんと、普段着ていると思われる、
パンツスーツ姿だったのだ
色は、真っ黒ではなかったが、
一応、黒
テーラードジャケットの中には
白いブラウス
まぁ、“通夜”は急に訪れるもの
百歩譲って、一般参列者であれば
そのような服装でも
許されるのかもしれない
昔は仕事帰りのサラリーマンが
スーツのまま参列している場面もあったが
(急遽、ネクタイだけ黒に取り換えて)、
さすがに近年は目にしなくなった
が、近親者である
しかもそのスーツはくたびれ、
持っていたバッグは、
プラダのナイロン製のトート
一応黒ではあるが、
“PRADA”のロゴが光っている
しかも、これも使い込んで
クタクタだ
完全OUTの服装である
さらには
どれだけ疲れているのか知らないが、
通夜中、ずっと寝ていた
それも、終電に乗った、
泥酔したサラリーマンのように
椅子の背もたれに身体を預け、
足を投げ出し股を開いている
顔は上を向き、
口を開けて...である
さすがに自分の妹ながら、
言葉が出なかった
妹の隣に座っていた母も
呆れ顔だ
なぜ一度実家に寄り、
喪服に着替えなかったのか...
本人はそれでいいかもしれないが、
こっちが恥ずかしい思いをした
そういえば、最近、
喪の和装姿を見かけなくなった
私が20代の頃だった
じいちゃんが死んだとき、
父が喪主だったため、
母も私も妹も和装だった
私はすでに家紋の入った喪服を
(当時、和装を“喪服”と言っていた)
持っていたのだが、
妹はまだ準備していなかった
そのため
母の知り合いから借り、
妹だけ“佐藤家”の家紋ではなかった
当時の私の認識では、
「喪主の家族が和装にするもの」だと
思っていた
が、佐藤家の親戚(年配の女性)は
ほとんど和装だったことに驚いた
昔はそれが正装だったのだろう
私の母が亡くなったとき、
私は和装にしなかった
結婚をして遠くの地に住んでいた妹は
和装を持参してきた
私が洋装にすることを伝えると
妹は、
「え? 着物着ないの!?」と
驚いていた
通常は親が死んだら和装にするのは
当たり前だ
和装にしなかった理由は、
「切除した胸を締めつけるから」
...ということにした
あとは着付けが面倒
その前に、
準備しなければならない、
和服の小物が多すぎたこと
自分では着られないので、
近所の美容室に
着付けに行かなければならないこと
...という理由も重なった
もちろん、一番の理由は、
○切除した乳房と
腋窩リンパ節郭清をしたため、
広範囲に痛みがあること
○腋窩リンパ節郭清をしたため、
締めつけることに
不安があったこと
...であるのは
事実なのだが...
知らず知らずのうちに侵してしまいそうな、
“マナー違反”
気をつけよう...
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Source: りかこの乳がん体験記
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