どうも、ヨウ-P(@s_y_prince)ことYO-PRINCEです!
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今日はこちらのツイートについて解説します。
グループホームのホームページなんかで利用者さんの写真を顔出しで載せることは『この人は認知症です』と全世界に発信してることになると教わったことがあります。
個人情報、慎重にならなきゃ。#介護にまつわる小さな引き出し
— ヨウ-P🍕介護男dism (@s_y_prince) 2019年9月19日
介護施設においても、個人情報保護は今や当たり前です。
一方で、ネットでの職員や利用者の顔出し写真も当たり前かのようになされています。
個人情報ってどこまで守るべきなのだろうと思っていたときに、ある研修でハッとさせられたのがツイートの内容でした。
介護施設についての個人情報の現状を「制度」の視点でまとめつつ、どうあるべきかについての個人的見解を書いていきたいと思います。
まずは知っておくべき個人情報保護の制度
介護施設での個人情報の取り扱いは、いくつかの制度等により定められています。
え?
個人情報保護法だけでしょ?
介護施設で知っておくべき制度はそれだけではありません。
- 個人情報保護法
- 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス
- 各施設の個人情報保護方針等
- 社会福祉士および介護福祉士法
ざっとあげるとこれだけあります。
な、何か…厳しそうっすね(-_-;)
では、介護施設が知っておくべき個人情報保護の制度のポイントを簡単にまとめておきたいと思います。
個人情報保護法
個人情報保護法は、正式には「個人情報の保護に関する法律」と言います。
インターネットが普及するなかで、個人情報の利用はどんどん拡大し、個人情報が適正に取り扱われるための法整備が必要となっていったことを背景に、2005年4月に施行された法律です。
この法律では、個人情報を次のように定義しています。
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
生存する個人?
じゃあ、施設で亡くなられた後の個人情報は含まれないってこと??
死者に関する個人情報は、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に次のような記載があります。
死者に関する情報が、同時に、遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合には、当該生存する個人に関する情報となる。
施設で亡くなられた方だからといって、安易に個人情報を漏らしてしまわないほうがよいということですね。
個人情報が「特定の個人を識別することができるもの」とあるので、写真も当然個人情報になります。
冒頭ツイートの例のように、顔出し写真などは当然「特定の個人を識別することができるもの」なので慎重に取り扱わなければいけないわけです。
とにかく、この法律は「個人情報を漏らすな!」ってことを言っているんですね!
個人情報保護と聞くと、「個人情報流出防止」を目的としているように思われがちですが、この法律が目的としているのは、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」です。
これは個人情報保護法第1条に明記されています。
要するに、保護も大事だけど、個人情報を適正に活用するようにしなさいよってこと??
そういうことですね。
個人情報が適正に取り扱われていない場合には、最悪の場合は罰則が適用されてしまうこともありますし、損害賠償責任が発生する場合もあるんですが、この個人情報保護法に定められていることは、「個人情報を適正に取り扱う」ための必要最小限のルールのみです。
じゃあ、介護施設で働く僕たちは何をもとに取り組めばいいんすか??
それが、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」です!
医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス
このガイダンスは、2005年4月の個人情報保護法の施行に合わせて厚生労働者が定めた
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」が元となっています。
このガイドラインは2017年5月29日に廃止され、翌日5月30日に経済産業省と厚生労働省の二つのガイドラインが一本化され、個人情報保護委員会の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が適用になったわけです。
ガイドラインがガイダンスになったんすか…。
詳しくはこちらをご覧ください↓
このガイダンスには、このような記載があります。
本ガイダンスでは、法の趣旨を踏まえ医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いが確保されるよう、遵守すべき事項及び遵守することが望ましい事項をできる限り具体的に示しており、各医療・介護関係事業者においては、法令、「個人情報の保護に関する基本方針」(平成16年4月2日閣議決定。以下「基本方針」という。)及び本ガイダンスの趣旨を踏まえ、個人情報の適正な取扱いに取り組む必要がある。
このガイダンスに、「遵守すべき事項及び遵守することが望ましい事項をできる限り具体的に示しており」とありますね。
例えば、医療・介護関係事業者が遵守すべき事項として、個人情報の利用目的をできる限り特定することや、利用目的を通知、公表することなどが具体的に明記されています。
そして、これらの「遵守すべき事項」を医療・介護関係事業者が遵守しない場合にはこのような記載があります。
個人情報保護委員会は、法第40条から第42条までの規定に基づき、「報告徴収」、「立入検査」、「指導・助言」、「勧告」及び「命令」を行うことがある。
これらをどのようにして守るかというと、それが前述の「各施設の個人情報保護方針等」を作らなければいけないということになります。
各施設の個人情報保護方針等
介護施設に行くと、必ず「個人情報保護方針」といったものが掲げられています。
「個人情報保護法」や「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」をもとに作られたものです。
個人情報保護法の目的は「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」なので、各施設の個人情報保護方針に掲げられているのは「どのように活用するか」という内容も盛り込まれています。
そして、利用者および家族に「個人情報保護方針」を説明の上個人情報を何に使うのかについて記載された「個人情報使用同意書」のようなものに同意をいただくことになります。
よくある使用目的はこんな感じです。
- カンファレンスでの情報提供
- 医療機関との連絡調整
- 行政が行う調査への協力
もう少し積極的に個人情報を使用する場合にはこんなものがあります。
- パンフレットへの利用者及び家族の写真の使用
- 広報誌への利用者及び家族の写真の使用
- ホームページ・新聞等への利用者及び家族の写真の使用
これらを含む「個人情報使用同意書」を用意されている介護施設は多数あります。
パンフレットや広報誌であれば、個人情報の公表範囲はさほど広くないわけですが、新聞となるとかなり範囲が広がりますよね。
では、ホームページはどうでしょう??
今の時代、ホームページと言われると、さほどためらいもなく受け入れてしまうと思いますが、実は対象は全世界なんですよね…。
インターネット上となると、少し同意をためらったほうがいいのかなと感じますよね…。
とにかく、個人情報の使用目的は、介護施設によって異なります。
使用目的はどうすることがいいのでしょうか?
これについては、記事の後半で書いていきたいと思います。
社会福祉士および介護福祉士法
個人情報保護に関する義務は「個人」にも課せられています。
それが、社会福祉士と介護福祉士ですね。
この法律は、国家資格である社会福祉士と介護福祉士の資格についてのもので、1987年に成立した法律です。
この法律の中で、個人情報に関連する義務は3つあります。
- 誠実義務
- 信用失墜行為の禁止
- 秘密保持義務
それぞれ、「社会福祉士および介護福祉士法」のなかでは次のように規定されています。
【誠実義務】社会福祉士又は介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない。
【信用失墜行為の禁止】社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
【秘密保持義務】社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その義務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなった後においても、同様とする。
個人情報の適正な取り扱いについては、社会福祉士や介護福祉士は「個人」としても義務が課せられており、違反した場合には、登録の取り消しや名称の使用禁止、最悪の場合は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられることもあるのです。
だから、私たち社会福祉士や介護福祉士は、プライベートでも最善の注意を払います。
同僚と飲みに行ったときに仕事の話をするときなどは、個室のある居酒屋を選び、かつ、イニシャルトークでしか話さないようにしたり、声を小さくする等しているのです。
これをしていないと、思わぬところからクレームが入ることがあります(-_-;)
匿名で施設にクレームが入ったことが実際にあったので、社会福祉士または介護福祉士の皆様は気を付けてくださいね。
クレームで済んだらいいですけど、最悪の場合、資格はく奪されちゃいますから…。
インターネットでの顔出しは…ちょっと待て!
ここまで個人情報にまつわる制度を見てきましたが、個人情報の扱いは慎重にはならないといけないものの、施設がちゃんとした仕組みを整えていれば幅広く個人情報を使用できるということが分かっていただけたと思います。
とはいえ、冒頭ツイートのとおり、インターネットでの顔出しだけは慎重になったほうがいいと私は思うのです!
インターネットの怖さを知ったうえで、慎重に顔出し写真をホームページ等に使われる施設もあるとは思いますが、一定数の施設は、その慎重さに欠けているのではないかと感じています。
「社会福祉士および介護福祉士法」の誠実義務にあるとおり、社会福祉士や介護福祉士であれば、インターネットの利用者の顔出し写真を掲載する際には、「その者の立場に立って、誠実にその業務を行う」必要があります。
利用者または家族の同意を得ているからインターネットに顔出し写真を掲載していいというわけではありません。
特に家族の同意というのは危険なもので、契約の際には登場していなかった身内から思わぬクレームが入るケースもあり、稀なことではありません。
私の施設も、ホームページ等への写真掲載については家族の同意を得ているのですが、こんなやりとりをすることがあります。
ホームページ等への写真の掲載なんですけど、他のご家族の方にも了解をもらっておいてもらえますか?
はい、わかりました!
どんどん写真使ってください!
よくあるやりとりですが、この家族は兄弟姉妹にこのことを伝えるでしょうか??
90%以上伝えないですよね…。
仮に伝えたとしても、すべての親族に伝えることなどありません。
施設としては同意を得た家族に責任を求めればいいのかもしれませんが、そんな訳にもいかないようなトラブルに発展することだってあるわけです。
ちょっと怖くなるような話をしてしまいましたが、インターネットだけはずっとネット上に残ってしまうので怖いんですよね…。
紙媒体なら、しばらくの期間だけのことなので、さほど恐れることもないかもですが…。
なので、私としては、インターネットでの顔出しは「ちょっと待て!」なわけです。
利用者の笑顔や表情をネット上で使うことは、施設にとってはかなりのアピールになるかもしれませんし、私も何度も羨ましく他施設のホームページを見ていました。
でも、私にはインターネットでの利用者の顔出しが最後までできませんでした…。
怖さだけではなく、利用者本人にとってインターネットでの顔出しはどうなのだろうか…という思いが拭いきれなかったからです。
仮にインターネットでの顔出しについて利用者や家族の同意があったとしても、深く考えずに同意されてるとしたら躊躇してしまうんですよね…。
多くの場合はインターネットでの顔出しは問題ないとは思うのですが、社会福祉士であり介護福祉士である私としては、結果はどうあれ「誠実さ」を忘れず、このテーマと向き合い続けるべきだと考えています。
まとめ
介護施設における個人情報について制度的な理解をしたうえで、インターネット上で利用者の顔出し写真の掲載の是非を考えてみました。
インターネット上で顔出し写真を掲載する場合は、この記事に書かれていることを踏まえながら検討されることをオススメします。
また、介護サービスを利用される側の方々は、その写真に誠実さがあるかを感じとるようにしてみましょう。
職員の写真を使っている場合にも同じことが言えると思います。
すでに退職した職員の写真がいつまでもホームページで掲載されていたり…。
「誠実さ」ないですよね(^_^;)
とはいえ、今の時代、インターネットはうまく活用すべきです!
写真も上手く使うべきだと思っています!
写真を使うときは、「怖さ」を基準に考えることも大切ですが、ぜひとも「誠実さ」をもとに考えてみてください!
そんな写真ならネット上で輝き続けることと思います!
Source: すべての道は介護に通ず【暮らしかるモダンなブログ】
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